7月29日、EUの銀行監督機関、欧州銀行監督機構(EBA)が主要51行の健全性を点検する資産査定の結果を発表した。イタリア3位のモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナは最悪の場合、中核的自己資本の比率が今後3年間で12%台からマイナス2%台にまで落ち、深刻な資本不足に陥るという。イタリアの銀行は不良債権にまみれ、その総額は3600億ユーロに達している。
しかし真のリスクは不良債権問題ではない。「五つ星運動」こそ真のリスクなのだ。「五つ星運動」が求める国民投票でユーロ導入の是非を問えば、イタリアの有権者はきっと「ノー」と叫ぶだろう。デジタル民主主義が、イタリアの既得権益、職業政治家、グローバル企業や金融機関を優遇するEUといった既存のエリート・システムを木っ端微塵(みじん)に破壊する日はもうそんなに遠くないのかもしれない。
独立運動の震源地、スペイン・カタルーニャ自治州
カタルーニャ出身のアントニ・ガウディの代表建築「サグラダ・ファミリア」が灼熱の太陽に向かってそびえ立つ。地中海に面するカタルーニャ自治州の州都バルセロナはすごい熱気だった。創造性の魅力と活力。虐げられ、収奪されし者たちの不屈の魂がスペインからの独立を求めている。カタルーニャは、来年夏までに一方的に独立の住民投票を実施する可能性が生じている状況にある。
独立派のカタルーニャ民主党バルセロナ副会長のカッレス・アーゴスティさん(45)は「7月27日、州議会で専門家委員会がまとめた独立への複数のロードマップが承認された。独立は次の5年は難しいかもしれないが、20年後は確実に独立している」と胸を張る。アーゴスティさんは1970年に生まれた。「カタルーニャ独立運動はスペイン継承戦争(1701~14年)に遡る300年余の歴史がある。私の父はフランコ独裁下、共産党の地下活動家として独立運動を続けた」。
スペイン継承戦争でハプスブルク朝についたカタルーニャはブルボン朝に敗れ、独自の政治権力を失った。バルセロナが陥落した9月11日はカタルーニャのナショナル・デーに定められた。フランコ独裁下(1939~75年)、カタルーニャ語は禁止された。
大航海の時代、スペインの繁栄は地中海から大西洋に移ったが、地中海貿易と産業革命の集積が残るバルセロナは今も昔もスペイン経済の中心だ。カタルーニャ人は驚くほどよく働く。バルセロナを放っておくと政治の中心マドリードより強くなって、スペインを崩壊させる引き金になる─。そんな恐怖心に取り憑かれた支配者がカタルーニャを弾圧し、富を収奪する歴史が繰り返されてきた。