給与の下落に伴い、「生活がかなり苦しい」、「やや苦しい」という人は増加し、いま、それぞれ約30%になり、合わせると国民の60%以上が「生活が苦しい」という国になっている。90年代前半の3分の1から大きく増えた。
図‐2の通りだ。トマ・ピケティーは格差の拡大による貧困層と富裕層の増加を指摘したが、日本には当てはまらない。年収300万円以下の層の比率は増えているが、年収1000万円以上の層の比率は1990年台後半にピークを打ち、その後減少しているのだ。要は、格差は拡大しておらず、貧困層、富裕層を問わず給与が減少している人が多いのだ。
この結果、バブル経済崩壊直後の1992年に9%近くあった「生活に大変ゆとり」と「ややゆとり」がある層の比率は、2014年には半分以下の3%代に落ち込んでいる。図‐3の通りだ。給与の減少に合わせ、生活苦を実感する人の比率は増える一方なのだ。日本は1億総下流時代に向かっているようだ。どうすれば防げるのだろうか。電気料金の引き下げが給与増に役割を果たすことになる。
電気料金はなぜ上がった?
電気料金上昇の第一の原因は、原子力発電所の停止を補うため火力発電所の稼働率が向上し、液化天然ガス(LNG)、原油などの化石燃料の購入数量が増えたことだ。東日本大震災前には発電量の約30%を賄っていた原発は定期点検後に停止が続き、徐々に発電量は減少し、2014年度にはゼロになる。図 - 4の通りだ。
貯めるとコストが高い電気は、必要な時に必要な量を発電することになるが、電力需要は季節により、また1日のうちでも変動する。このため最も需要の大きくなる時期にだけ使用される設備を電力会社は持っている。震災前にその役割を果たしていたのは、燃料価格が相対的に高かった石油火力、次いでLNG火力だった。原発の停止により稼働率が低かった火力の稼働率が向上し、石油とLNGの購入量は大きく増加した。