(レナード・ムロディナウ 著、田中三彦訳 、ダイヤモンド)
いま、「たまたま」という本がベストセラーになっています。人生は「たまたま」の連続であると常々思っている私は、書店で見かけるなりすぐ買ってしまいました。
私は、良いことであっても悪いことであっても、偶然出くわす「たまたま」をやり過ごさず、むしろその「たまたま」に立ち向かって、「出たとこ勝負」で毎日を過ごしていきたいと思っています。このコラムでも折に触れ述べてきた、「たまたま」と「出たとこ勝負」は、おおげさに言うと私の人生観ですが、最近またその大切さを感じたので、それについて書いてみたいと思います。
2010年2月15日(月)、内閣府と大手6銀行から、次のような発表がありました。
■2009年10~12月期の実質GDPは年率4.6%増 (Bloomberg)
内閣府は、2009年10~12月期の実質国内総生産(GDP)が4.6%増えた(前期比、年率換算)と発表しました。設備投資が7期ぶりに増加に転じ、個人消費が前期比0.7%増と3期連続のプラスになったことが大きな要因です。
ただこれは、どん底から少し回復しただけに過ぎません。例えば、おそらく会社の利益は2008年9月のリーマンブラザーズ・ショック以前の半分までにも戻っていないと私は思います。職を失った人が多く、新卒学生の採用も遅々として進まない現状を打ち破る活力向上策に、政治家こそ力を入れなければならないと思います。
■返済猶予、申請1万9000件 6大銀、円滑化法対応 (NIKKEI.NET)
6大銀行(三菱東京UFJ、みずほ、三井住友、りそな、住友信託、中央三井)は、2009年12月から始まった「中小企業金融円滑化法」に基づき、中小企業向け融資や住宅ローンの返済条件が緩やかになった実績を発表しました。申込件数は19,352件(金額では8,692億円)で、このうち返済繰り延べや毎月の返済額を減らすなど、条件変更に応じたのは3,213件(金額では2,694億円)で、件数も金額も法施行前に比べ大幅に増えています。
2009年は、会社の業績が悪くなり、給与や賞与が減って住宅ローンの返済に困る人が増えました。銀行側も窓口を整え、店頭でのPRなどに努めましたから、より多くの人たちに情報が広まったのでしょう。先の金融円滑化法では、返済条件の変更を求められれば、銀行はできるだけこれに応じるべし、と定められました。
「モラトリアム」を打ち出した亀井大臣の原点
前者のニュースのような厳しい経済情勢のなかで、2009年8月に亀井静香郵政・金融大臣が打ち出した「モラトリアム」は、一方で“経済の禁じ手である”との評価も受けました。しかしその後、金融政策に詳しい、日銀出身の大塚耕平・内閣府副大臣(金融・郵政担当)をしっかり働かせて、金融業界の意見も聞いて、後者のニュースのような形で“助けの手”を世の中にさしのべた、(理屈や評論ではない)実行力を、私は高く評価しています。