2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2010年4月7日

エネルギー安全保障と気候変動問題に益する原発利用。だが、足元を見れば、日本の原発の稼働率は、現在64.7%(2009年度)と低調だ。原発の稼働率向上に向けた日本の課題とは?
現在日本には、54基の原発がある。アメリカの104基、フランスの59基に次いで第3位であり、世界でも有数の保有数だ。基数以上に大切なのが、その原発がどれだけ動いているかという「稼働率*1」。稼働率が低ければ、目算の産出エネルギーが目減りするわけだし、運転技術が低くトラブル停止も多いと見られ、外部評価が低くなることもある。事実、昨年からのUAE、ベトナムでの海外商戦の敗因の1つに、この稼働率が影響したと見る関係者は多い。

日本の原発稼働率 「64.7%を85%に」

 日本の原発稼働率は、08年で58.0%、09年は64.7%。オバマ政権下で再び原発に注力することを宣言したアメリカ、俄然この分野で存在感を増してきた韓国は、2000年代からともに稼働率90%以上、フランス、カナダも75%を超えている。日本は、原発先進国の中で低い稼働率なのである。もちろん稼働率を下げている大きな原因には、地震や故障・事故によって停止したプラントが、点検の長期化及び地元了解が得られず、再起動できない事例も含まれる。柏崎刈羽1~5号機、美浜2号機、廃炉が決まった浜岡1、2号機などがそれである。

主要各国の設備利用率〔稼働率〕の推移 (出典:原子力施設運転管理年報)
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 だが、現在の世界的な動向を鑑みて、国および事業者は、2030年までに稼働率を85%に引き上げ、原発を主要なエネルギー源に位置づけていくというコンセンサスを取っている。もし稼働率を85%まで上げれば、現在5,000万kWの原発発電容量は、6,800万kWを超える試算だ(ただし、現在計画・建造中の原発8基が順調に建造された場合)。

 安全・安定運転に向けた保守管理技術をいかに効率的に行い、稼働率向上を実現するか。その改善に向けた動きを見てみたい。

稼働率向上を実現させたアメリカをモデルに

 3月上旬、経済産業省総合資源エネルギー調査会。「設備利用率の向上」「中長期的な設備容量のあり方(新増設・リプレースの推進等)」をテーマと した審議会が開かれた。エネルギー政策基本法およびエネルギー基本計画に則り、原子力エネルギー政策の中長期的な方向性を審議する一連の審議会の1つである。

*1 稼働率:「稼働率」の代表的な指標は「設備利用率」である。その原発が一定期間に生み出した発電電力量と、その一定期間でフルに稼動して出力したとして得られる発電電力量(定格電気出力×暦時間)の百分率比。算出方法は以下の通り。
設備利用率〔%〕=発電電力量〔MWh〕÷(認可出力(MW)×暦時間〔h〕)×100〔%〕
 

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