2024年4月27日(土)

対談

2016年12月9日

飯田:超有能なマネージャーについてもらっている状態ですね。

矢野:こういう工程管理は複雑すぎて、人間だけではできません。「とりあえず最初に来た注文から作業しようか」というくらいで終わっていたんです。

飯田:経験と勘だったわけですね。でもAIは経験と勘でさえも毎日アップデートして、しかも自分以外の経験もフィードバックできる。もたらされる成果の明確なデータがあって、何が目的かもはっきりしている業務であるという意味で、やはりAIとビッグデータは倉庫の在庫管理や小売店の商品補充などと相性が良さそうですね。

矢野:ビジネスで起こる問題には、アウトカムが数値化できて、目的もはっきりしている問題が沢山あります。これには、価格や品揃えを変えたときにどのお客さんにどのような影響を与えるか、ソリューションのポートフォリオをどうするかといった問題が含まれます。これらの最適解を導くのに、AIはとても有効なツールになります。これまではビジネスは複雑なので、演繹的なモデルを作ることがとても難しかったのですが、データからモデルを逆推定することでそれが大きく変わりました。

人はもう「買いたいもの」を買っていない?

飯田:検索エンジンの発達は、経済学の依って立つ土台をも揺るがせています。検索結果の上位3位までに90%以上のアクセスが集中する状況では、かつてのように「安いから」「品質が高いから」という理由ではなく、「みんなと一緒だから」買ってみようという購買行動になっていきます。ここでは仮説を立てて、データを集めて、分析するという方法がかなり厳しくなっている。何が売れるかはほとんどわからないという世界です。

 たとえばiPhoneとAndroidのどちらが優れているのか、はっきりとした答えなどありません。僕がパソコンを触り始めた頃は、どれがハイスペックでどれがロースペックかはほぼ価格ではっきりとわかりましたが、今のパソコンの価格差を、演算や処理速度のスペックだけで説明することはかなり困難です。価格と品質を説明変数にして、売り上げを被説明変数にするという分析がかなり難しくなってきている。その意味でも、ビッグデータの活用は重要だと思うんです。

 僕が大学院生だった十数年前に、少し大きなシミュレーションをするとなると、パソコンの性能がかなり重要でした。当時の僕のパソコンではいつになったら終わるのかわからないけど、研究所のパソコンだと小一時間で終わるとか。でも今ではほとんどのパソコンでもっと複雑な計算がより短時間でできてしまいます。特殊なエンジニアでないかぎり、ほとんどの人にとってパソコンの品質はそこまで気にならないものになってしまいました。では、何が購買要因になるのか……まあ、これがわかれば金持ちになれるのですが(笑)。


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