3月に道交法改正
強化される認知症対策
75歳以上の高齢運転者による死亡事故の割合が12.8%とはいえ、認知症に罹患しやすい高齢者の多くがハンドルを握る現状を憂う意見には耳を傾ける必要がある。
今年の3月12日から認知症の高齢運転者への対策を強化した改正道路交通法が施行される。免許更新時に認知機能検査で認知症の疑いがある75歳以上のドライバーは、逆走や信号無視などの交通違反がなくても医師の診察が必要になる。逆に交通違反があると、臨時の認知機能検査が課され、認知症が疑われると医師の診察が必要になる。いずれも認知症ドライバーによる重大な事故を未然に防ぐのが狙いだ。
免許更新を受ける高齢ドライバーの数から考えると、これまでは認知症と診断されて免許取り消しになるケースは少なかった。
老年精神医学が専門の慶應義塾大学医学部の三村將教授は「この改正法の施行により、医師による臨時適性検査の対象が大幅に拡大されるので、診察を行う認知症の専門医をどう確保するかなどの問題はあるが、一定の成果はあるのではないか」とみている。
高齢者の免許証の返納についてみると、警察庁の統計では75歳以上の免許所有者のうち自主返納したのは15年では2.8%しかなく、返納者数は増えているが低い水準にとどまっている。
特に地方の過疎地域の場合、地方自治体の財政難からバスなどの公共交通機関が縮小、廃止されてきており、買い物、病院通いなどの移動手段がマイカーしかないところが多い。
このため、高齢者になっても生活の足として運転せざるを得ない状況にあり、地方では一律的な返納は反発を招きかねない状況になっている。
高齢者に対して無理に免許を返納させようとするとトラブルが起きかねない。昨年12月には岡山市で事故を起こした母親(79歳)と免許返納を求める息子とで口論になり殺人未遂事件まで起きている。
仮に75歳以上の高齢者すべてに免許証を返納させたとしても、前出の通り、12.8%の死亡事故はなくなるが、90%弱の死亡事故は残る。
果たして交通事故を限りなくゼロに近付け、しかも地域の足を確保する解決策はあるのだろうか。