課題となる中古車対策
「後付け」安全装置も出現
「今のところ中古車に後付けで自動ブレーキ機能をつける予定はありません」と自動車会社の社員は話す。
中古車に対して後付けで自動ブレーキなどを装着するのは、センサーを付ける位置の設定が難しく、最近の車はエンジンとブレーキの動きがコンピュータ制御されているものが多いため、後から設置するのが技術的に困難だという。
このため自動車メーカーは安全装置の後付けを歓迎しない傾向がある。メーカーとしては、車の組み立て段階で電子部品の一部として装置を組み込まない限りは、事故が起きた際に責任が取れないという考え方だ。中古車の後付けより利幅の大きい新車販売に注力したいという思惑もあるだろう。
そうした状況のなか、自動車用品店最大手のオートバックスセブンが、昨年12月に急発進防止装置「ペダルの見張り番」を発売した。
もっともこれは「自動ブレーキ機能」ではなく、アクセルとブレーキの踏み間違いを防止するものだ。アクセルペダルを踏み込んだ量を電気的に制御して誤発進を防止するシンプルな装置で、カメラやセンサー機能は付いていない。
軽自動車を含む約100車種に後付けが可能で、価格は取り付け費用込みで税別3万9999円。「見張り番」を装着した車に乗ってみたが、時速10キロ以下で動いているときにアクセルを強く踏んでも警報音が鳴ってゆっくりと進むだけで加速しない。
アクセルをゆっくり踏み込むと普通に加速する。これならブレーキとアクセルの踏み間違い事故も減りそうだ。自動車メーカーがやろうとしない後付けできる安全装置が低価格で登場してきたのは好ましいことで、問い合わせが相次いでいるそうだ。
あらゆる状況に対応した自動ブレーキとなると、センサーなど複雑な装備が必要になり、後付けはできないことから、現状では「見張り番」は事故防止のための一つの選択肢と言える。
富士重工業の安全運転支援システム「アイサイト」を搭載した車と非搭載の車を比較したところ、1万台当たりの人身事故発生件数が61%減少したそうで、操作ミスによる事故防止に役立っていることが確認された。同社によると新車購入時の「アイサイト」装着比率は9割以上になっているという。
損害保険各社でつくる損害保険料率算出機構は、自動ブレーキを搭載した車の事故率が大幅に減少していることから、昨年12月に自動ブレーキがかかる車の自動車保険料を平均9%安くすると発表。18年1月から適用になる。
保険料が安くなれば、自動ブレーキ機能を搭載するコストの負担が実質減ることになり、自動ブレーキ機能を搭載するインセンティブにつながる。蛇足だが、年間8兆円の市場規模の損保会社にとっては保険料収入の約6割を占める自動車保険ビジネスの縮小につながる可能性がある。