期待すべきはテクノロジー
広がる「自動ブレーキ」
その解の一つはテクノロジーである。昨今注目されている自動運転は、そもそも人にぶつからない可能性が高いが、すべての自動車が自動運転車になるにはまだまだ時間がかかる。現実的には、「自動ブレーキ機能」に大きな期待が寄せられる。
08年にいち早く低価格で衝突防止装置を取り付けたのが、ステレオカメラで前方の障害物を検知する運転支援システム「アイサイト」を導入した富士重工業だった。10年以降、装着費用が10万円程度と割安だったことからユーザーの支持を受けて普及した。
トヨタ自動車は、車の前後に取り付けた超音波センサーが障害物の接近を表示とブザーで知らせ、ペダルの踏み間違いによる衝突防止に役立つ「インテリジェントクリアランスソナー(ICS)」を開発、12年以降9車種に搭載してきた。今後、装備できる車種を増やす方針だ。
ICSを装備した車と、していない車の駐車場で起きた事故データ約2500件を比較調査したところ、装着した車のペダル踏み間違い事故が約7割減少、後退時の事故は約4割減少したという結果を得られたという。
自動車の価格が高価であればあるだけ、自動ブレーキ機能を付加することによる価格上昇の割合が抑えられるため、受け入れられやすいが、低価格がウリの軽自動車にもこの機能は広がってきている。
ダイハツ工業は12年にレーザーレーダーで前方の障害物を検知する衝突回避支援システム「スマートアシスト」を軽自動車で初めて導入、5万円という低価格だったことから装着するドライバーが増え、昨年7月には「スマートアシスト」搭載車種が累計100万台を超えた。今や同社が販売する乗用車では、約8割のユーザーが「スマートアシスト」搭載の自動車を選んでいるという。
今後、自動ブレーキ機能を搭載した自動車はますます増えていくものと予想されるが、ここで問題となるのが中古車である。
日本では新車約500万台に対し、中古車約370万台が売れる(15年)など、中古車市場の存在感は大きい。自動ブレーキ機能が搭載された新車が数多く世に出れば、いずれ中古車市場にも出回ることになるが、それにはまだ時間がかかる。自動ブレーキ機能の後付けが安価でできれば、事故は少なくなるが、一筋縄ではいかないようだ。