2024年12月22日(日)

坂本幸雄の漂流ものづくり大国の治し方

2017年2月23日

 昨今、働き方改革にかんする議論が盛んだ。いま日本企業がすべきことは、この働き方改革に加えてまっとうな「払い方改革」を実施し、グローバル競争を勝ち抜くための人材を自社に引き入れることである。

 私は新卒でテキサス・インスツルメンツ(TI)に入社したが、同社は頑張って成果を残せば残しただけ報酬が支払われる仕組みであった。同期とは入社して10年で10倍の差があった。

 月給以外にも、業績に応じてボーナス、ストックオプション(あらかじめ決められた価格で、自社株式を購入できる権利)、ディファードストック(後配株)、リテンションボーナス(一定期間会社に残れば、事前に決められた金銭が支払われる)などが支払われた。

 それらを合算すると、40代の頃から1億円を超えることも珍しくなかった(ベース給3500万円ほどで、残りはストックオプションなどのため変動する)。

 米国企業に限らず、台湾や韓国といったアジア企業を含め、グローバル企業でこのような賃金体系は珍しくない。

 翻って多くの日本企業は、同期の間で極端な賃金差がつくことはない。これでは頑張って成果を残すインセンティブに欠けてしまう。結果として突出した製品やサービスが出てこない。

 多くの企業の業績は、トップ数十人で決まると言っても過言ではない。このトップ層を巡っては、世界中で引き抜き合いが行われている。業績を引き上げる優秀な社員を冷遇する賃金体制では、「どうぞ引き抜いてください」と言っているようなものである。

 グローバル競争を勝ち抜きたいのであれば、賃金だけの問題ではないが、「会社にいたい」という仕組みを早急に構築すべきである。

(写真・iStock)

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