2024年4月20日(土)

坂本幸雄の漂流ものづくり大国の治し方

2017年2月23日

 私がCEOを務めたエルピーダメモリは、日立製作所とNECと三菱電機の半導体部門が合併して発足した企業だが、着任後すぐに賃金体系にメスを入れた。

 役員ではなくても優秀な従業員にはストックオプション等含めてかなりの額を支払うケースもあった。

 それでもサムスンの半導体部門に引き抜かれたことがあった。会社に是非とも残って活躍してもらいたいエンジニアだったが、後悔していても仕方ない。

 サムスンの部門トップに手紙を出し、エルピーダメモリの技術を使用してはならない契約を転職者と交わしたので、この契約が履行されていないことを確認できた場合は法的手段に訴えると伝えた。その甲斐あってか、彼は研究部門ではなくマーケティング部門に配属された。

 優秀なエンジニアが引き抜かれることは、もっとも一般的な「技術流出」の要因である。日本企業は「払い方改革」を大胆に進めなければ、技術は流出し、グローバル競争には敗北するなど、ますます窮地に追い込まれることになる。改革は泥船が沈む前に実行しなければならない。

  
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◆Wedge2017年2月号より


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