2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年3月17日

疑問は深まるばかり

 正に「疑問は深まるばかり」です。記事は、マレーシアは何の利益のために金正男を自由にさせていたのかと問題提起しますが、貿易上の利益以外の説明はありません。今回も遺体の検視や引き渡しなどにつきマレーシアと北朝鮮の間で激しいやり取りがあったと言われます。

 金正男は、金正恩にとっては、いつの日か自分の体制に挑戦する可能性を持っていました。中国が後ろ盾になっていたことや張成沢(2013年粛清)と近い関係にあった(経済的にも助けていた)こと、また、金正男は中国の開放化を見ており今の北朝鮮の情勢に批判的であったこと等が言われてきました。金正男を担いで亡命政府を海外に樹立しようとの動きも噂されてきました。また、北朝鮮の中で不満が増えているとか、米国などでは北朝鮮を変えるためには結局レジーム・チェンジしかないとの議論も常に出ていました。

 恐怖政府を推進する金正恩が金正男を排除し自分の体制を更に強固にしたいと考えたとしても不思議ではありません。更に金正男に出されていた帰国命令に同氏が従わず海外亡命を望んでいたとの未確認情報もあります。韓国の李炳浩国家情報院長は国会に対し、2012年以来金正男殺害の指令が出ていた、と言っています。

 北朝鮮には政治粛清の歴史があります。1997年には、金正日の妻であった成恵琳の甥の李韓永(1982年に韓国に亡命)が北朝鮮工作員により殺害されました。

 2011年金正恩体制に移行した時には、一部に北朝鮮が変化するのではないかとの期待も持たれましたが、金正恩体制は今や独裁化、恐怖政治を益々強め、核・ミサイル開発等を進め国際社会に挑戦しています。北朝鮮に対し外交、政治経済社会上の圧力を強めていく必要があります。同時に中国やロシアが北朝鮮に影響力を行使することも一層必要となっています。

 この事件について中国は沈黙をしています。今回事件は既に緊張関係にあると言われる中朝関係を更に複雑にするかもしれません。

  
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