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子育ていろいろ 本いろいろ

2017年3月31日

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小川たまか (おがわ・たまか)

フリーライター

1980年東京生まれ。教育、働き方、性暴力などを取材。『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(2018年/タバブックス)。Yahoo!個人「小川たまかのたまたま生きてる」(https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/)などで執筆。Twitter:@ogawatam

ディベート力よりコミュニケーション力の時代

――男性の方が無表情になりがちな傾向があると思うので、ぜひお父さんたちにもこの本を読んでもらいたいなと思います。表情筋をほぐす「顔遊び」を紹介したページなど特に。

天野:やってほしいですね。男性社会の中ではコミュニケーション能力よりも、論破するディベート力みたいなものが評価されてきました。トップダウンで、トップが「黒」と言ったらみんなに「黒」ということを知らしめれば、これまでの企業ではそれでよかったので。

 でもディベートで相手を言い負かせるという古い手法から、お互いの違う部分や考え方を出し合って、誰も見つけていなかった答えを構築していくというコミュニケーション能力の方向へ企業も変わっていかないといけないし、それができるようになるためには教育も変わらないといけません。

――どのような教育でしょう。

天野:先生が一方的に「正解」を教えるのではなくて、子どもたちが自分の中で設問を見出して、自分でその課題をクリアしていくような教育ですね。子育てには正解はないので、そういう意味でもぜひ男性には子育てをして、得体のしれない「子ども」とのやり取りを練習してほしいです。想定外のものと接することがコミュニケーション能力を培う良いきっかけになるのではと思っているのですけれど。

親から働きかけるのではなく、子どもの真似をする

――子どもって確かに得体が知れなくて、大人が思っている「コミュニケーション」が通用しないことも多々あります。同席している編集担当のKさんは1歳半の男の子がいますが、たとえば、この年頃の子とどうやってコミュニケーションを取ったらいいのでしょう? 

天野:一番良いのは、お父さんお母さんがお子さんの真似をすることです。たとえば子どもが「えへっ」って笑ったらママも「えへっ」て笑う。子どもが「いーー」ってやったら「いーー」って。

――ミラーリングですね。それだけでいいんですか?

天野:はい。こうすることで赤ちゃんは受容されていることを認識します。子どもが絵本をびりびり破いたら、たいていの親御さんは「なんで本を破くの!」って言っちゃうんですけど、破くのって面白いんですよね。そういうときは「絵本は大事だからね、ちょっと待ってて」って言って、古新聞とか段ボールを持ってきて子どもと一緒にびりびり破る。そうすると子どもは「自分のやっていることを肯定された」と思って器が大きくなります。ぜひそれをいっぱいやってください。真似が一番です。楽しいですよ。逆に親からの働きかけはあまり意味がない。

――親が何かを教えようとする行為はあんまり意味がない?

天野:親はどうしても自分から子どもへ働きかけをしてしまうんですね。頭の良い人ほどそうです。子どもから聞かれていないのに「これはポットよ」「これは赤色」って教えようとしたり、足を持って「あんよが早くできるように」って動かしたりする。実はそれはほとんど意味がないんです。

――子どもの行動や、好奇心が動くのを待つ、ということですね。すごくわかる気がします。子どもに「ほらおもちゃだよ~」って機嫌を取ろうとして完全に無視されることあります(笑)。

天野:子どもはおもちゃではなくって、リモコンとかティッシュとか、大人からすると意外なものに興味を示すことがありますね。箱からティッシュを引き出す遊びを生後半年くらいになるとやりたがります。あれは子どもにとっての探求です。「ティッシュをどかしたらなくなるはずなのに、なくならない。どうしてかな?」って自分で仮説を立てて探求してるんです。最後の一枚をとったときに「ついになくなった! 僕の仮説は正しかった!」って次の段階にいけるんですけれど、子どものそういう行動は途中で止めさせられることが多いわけです。

――親は「もったいない」って思って止めてしまいますね。

天野:もったいないなんてことがわかるのはもっと大きくなってからですから。発達の順番をわかっていれば、保護者の方も一緒に楽しめると思います。ティッシュ遊びを止めさせておいて「子どもの研究心を育むために」って3万円もする知育玩具を買ったりするのは、それこそもったいないかもしれない。出したティッシュは、ママが無駄にしないで後で使いましょう。

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