2024年11月22日(金)

シリーズ「東芝メモリを買ってほしいところ、買ってほしくないところ」

2017年5月9日

それでも中国は諦めない-技術者自給を目指す-

 紫光集団を中心とした世界半導体企業の”爆買い“作戦は失敗した。しかし、中国は諦めない。紫光集団は、前述した通り、武漢、南京、成都に巨大半導体工場を建設する。

 例えば、武漢には、第4回の記事で紹介した通り、広大な土地を使って、3次元NAND用の巨大半導体工場、小学校から大学までの学校区、住宅街やショッピングモールなどをつくる(図4)。要するに、ここに3次元NANDの巨大半導体工場を中心とした“街”ができるのである。

 2020年までに建設する月産30万枚の3次元NANDの巨大半導体工場には、中国にあるサムスン電子の西安工場の技術者を多数スカウトし、さらに台湾、日本、欧米からも技術者を掻き集めようとしている。

 しかし、その後は、この街の学校区で教育を受けた高校生や大学生が、3次元NANDの巨大半導体工場に雇用される計画である。つまり、3次元NANDの巨大半導体工場を中心とした武漢で、半導体の技術者を自給していくのである。これは、南京や成都でも同じ計画が進行中である。

 当初の“爆買い”作戦より時間がかかるが、極めて堅実な計画であると言える。中国の街ごとに、半導体技術者が自給できるようになれば、中国が半導体王国になることも夢ではない。

 日本半導体産業は、1980年代半ばに世界シェア50%超を占めていた(図5)。ところが、その後、シェアは右肩下がりに低下し、2016年には7%にまで落ち込んだ。その間、経済産業省はシェアの低下を止めようと、国家プロジェクト、コンソーシアム、合弁会社を山のように作った。しかし、これらは場当たり的な“絆創膏貼り”にしかすぎず、まったく奏功しなかった。そして、大学生の間では電気・電子専攻離れが進み、半導体は不人気産業となってしまった。

 一方、中国の半導体産業政策は、その根本の学校教育から強化を図ろうとしている。5年後、10年後、日本と中国のどちらの方が半導体の競争力が向上しているだろうか。その答えは、敢えて言葉にするまでもないほど、明確であろう。
  
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