2024年12月19日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月6日

 ロウハニ再選はひとまず良いことでした。しかしイランは宗教統治の国であり、民主主義は抑圧されていますし、強硬派は制度上の力も握っています。強硬派の動きは引き続き注視する必要があります。更に、最高指導者ハメネイの後継者問題も段々世界の関心事項となっています。大統領選挙に出たライシも有力候補と言われています。

 核合意はトランプ大統領も破棄はできないでしょう。マティス国防長官は署名した以上維持すべきとの立場をとっています。実際にこれを破棄すればサウジなどにとっても良いことにはなりません。しかしトランプは、イランに違反があれば厳しく対処していくでしょう。また核搭載可能ミサイルの実験のようにグレーの問題についても必要に応じ対応措置を取ることが相当です。

 イラン外交の二つの根本的な問題は、イスラエルの生存権を否認していることとヒズボラ等海外勢力を支援していることです。長年日本などもイランに言ってきたことですが一向に変わりません。イランはイスラエルの生存権を認めるべきですし、ヒズボラなどの支援も規制すべきです。

 民主化についてトランプ政権は圧力をかけることはしない考えのようですが、中東諸国は自ら民主化を推進していくことが望まれます。実際には少しずつ民主化が進んでいます。特に王制国家にとっては長期的に極めて重要な問題です。例えば徐々に立憲君主制に移行していくことが望ましいのではないでしょうか。

 トランプは中東和平をやって見せると自信満々ですが、旨く進むかは疑問です。具体的な案も明らかにしていませんし、唯一の可能性と思われる二国家解決案についても態度を曖昧にしたままです。

 トランプは先の中東訪問でイスラム過激派撲滅に向けてアラブ諸国の団結を訴えたばかりですが、6月5日にサウジなど4カ国がカタールと断交しました。カタールのムスリム同胞団支援、同国のアルジャジーラ放送、イランとの近い関係等が理由と言われていますが、近年ひどく積極的な外交路線を取るカタールとの関係は従来から緊張していました。カタールには米中央軍の地域司令部もあり、今回の出来事はトランプ政権の中東政策にとって早速厄介な問題になる可能性があります。

  
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