2024年12月22日(日)

「資格王子」のワンポイントレッスン

2017年9月8日

 「会計の基礎を若手に学ばせたい」と思い、簿記検定取得を全社的に推奨する会社は多いだろう。しかし、実際に簿記の知識を得たとしても、営業マンの場合には事細かに経理の現場まで携わる機会は少ないのが現実である。「会社に言われたけど、自分にどう役立つか分からない。時間の無駄だ。」と若手に判断されてしまう可能性だってありうる。

(Halfpoint/iStock)

 これは簿記検定が、企業経営に必要な数字の処理方法を学ぶ検定であり、実際に帳簿記入をする立場にならなければ学んだ知識が直結しないためだ。

 適材適所と言うように、資格にも適材適資格がある。世の中には、簿記検定よりも更に「営業マンがビジネスで活用できる会計系検定」というものがある。しかしその存在はあまり広く知られていない。今回は、営業マンのための会計系資格「ビジネス会計検定」についてご紹介する。

簿記検定とビジネス会計検定の違い

 簿記検定もビジネス会計検定も同じ会計系資格であり、財務諸表について学ぶ資格だ。しかし、決定的に違うのは、「作る側」と「読む側」どちらに主眼をおいているか、ということだ。

 簿記検定は、基本的に財務諸表を作るプロセスを学ぶ資格だ。財務諸表の元となる、損益計算書や賃借対照表などを作成し、企業の財政状態を明らかにする能力を養うことが目的である。まさに経理の実務内容に直結する内容であるし、これを知らなければ経理はまず務まらないだろう。

 一方、ビジネス会計検定では、経理が作成した財務諸表を「読み解く力」を養うことに主眼がある。記載されている数字の意味するものは何なのか、企業の経営状態はどうなのかなど、分析能力を伸ばすための資格だ。簿記検定に必要な細かい仕訳なども覚える必要はなく、簿記検定の知識なく勉強することができるのも特徴の一つだ。

 営業サイドから見ると、「作ることができれば読むこともできるだろう」と安直に考え、簿記検定を勧めてしまいそうになるが、実際はそう簡単なことではない。

 経理の実務はお金の流れを記帳し、「見える化」することにある。実際に完成した数字がどのような意味を持つのかが読み解けるかどうかは、また違う問題なのだ。営業マンが簿記検定を単体で勉強した場合、基本的な会計の単語や仕組みは理解できたとしても、肝心の数字の意味が把握できない状態になる可能性がある。

 言うならば、簿記検定が「経理のプロフェッショナル」を目指す資格ならば、ビジネス会計検定は「経営者目線」を助長する資格なのである。

ビジネス会計検定は相手目線の分析を可能にする

 ビジネス会計検定で財務諸表の分析能力を養うことができれば、営業にも大きく役立つ。例えば、新規の取引先と打ち合わせをする前には、財務諸表を用いて相手のビジネスを分析し、その企業がどのようなサービス・商品に比重を置いているのか、コストはどこにかけているのか、前期に比べて傾向はどうなっているのかなど企業戦略を分析することができる。その結果、相手の興味をひく分野での提案や話題を持っていくことが可能だ。

 商談の席で原価が関わる話になった際には、会計のフレームを頭にいれておくことで、「このビジネスは儲かりそう」「この辺の数字が妥当だ」など自分で判断できるようにもなる。数字が読めるので、新聞の経済面の数字の意味もより身近に明確に理解できる。

 仕事以外でも、株式投資において投資先の財務状況を分析し、粉飾決算の危険性や支払い能力などより適切な評価ができるようになる。つまりは、簿記検定よりも日常的なビジネス・生活場面で使える実践的な会計知識が身につくのが、ビジネス会計検定なのだ。


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