世界中にショールームをおく大手競売会社クリスティーズ。18世紀にロンドンで設立されたこのクリスティーズのニューヨーク支社は、マンハッタンの一等地に美しいギャラリーを持っている。美術館クラスの絵画や彫刻、宝石類などがオークションの日まで一般人に公開されているのだ。
普段は気軽に入ることのできるこのクリスティーズだが、先日ばかりは様子が違った。特別展示用の列が、歩道まで並んでいるのだ。
11月15日に競売にかけられる、レオナルド・ダ・ビンチの油彩画「サルバトール・ムンディ」(救世主)が公開中なのである。
ダ・ビンチが本当に競売されるのか?
ダ・ビンチといえば、イタリアンルネッサンスの巨人。発明家としても才能を発揮する一方で、恐らく世界でもっとも有名な絵画、ルーブル美術館が所有する「モナリザ」の作者でもある。
ゴッホやモネ、ピカソなど、有名な巨匠たちの作品が競売で記録的な高値で落札された、というニュースを私たちは日常的に目にしている。
だがレオナルド・ダ・ビンチの、それも油彩画が競売にかけられるなど、最初はとても信じられなかった。何しろ彼の手によるものとされている絵画は、世界中でも20点以下しか残っていない。メトロポリタン美術館ですら、デッサンは何点か展示しているが絵画は所有していない。
「モナリザ」だってルーブル美術館では別格扱いで、厳重に警備されている。
日本で言うなら文句なしに国宝クラスの文化財が、誰の手に渡るかもわからない一般の競売にかけられて良いものなのか。
筆者も好奇心にかられて、まずは実物を見に行った。