アドバンテージの背景にある大きな責任
さて、今回の最高裁判決について、個人的な見解を述べさせて貰うと、契約締結義務に強制力があることを認めたことはさておくとしても、受信契約が成立した時点でテレビを設置した日まで遡って受信料を請求することができ、なおかつ消滅時効にもかからないとした点については、違和感を覚えます。
一般的な民間企業と消費者との間の契約の場合、「契約を締結するより前の代金を請求できる」ことからして考えにくいでしょう。さらに支払トラブルが起こった場合に、「いくらでも過去に遡って代金を請求することができる」というのも、消滅時効の関係でなかなか考えられません。
NHKを一つの企業体として見た場合、そもそも「NHKが映るテレビを置いている全ての人が受信契約を締結しなければならない」という時点で非常に大きな経営上のアドバンテージがあるといえます。さらに、「いくらでも過去に遡って受信料を請求できる」という結論は、いささか大きすぎるアドバンテージを与えているように感じます。
他方で、最高裁がNHKにこれだけのアドバンテージを認め、「合憲である」と判断したのは、ひとえにNHKに公共放送として高い使命と重要性があることを認めたからに他なりません。民放のようにスポンサーから提供で経営する場合、どうしてもスポンサーの批判はしづらいでしょう。税金で運営する場合には、現政権に批判的な報道を控える可能性があります。NHKには、視聴者からの受信料で経営することで「たとえ国家権力にすら肩入れすることなく、公平で客観的な放送を行うことで、国民全体の知る権利に応えること」が期待されています。
NHKには、今回の判決で強力なアドバンテージが認められた背景に公共放送としての高い使命が求められていることを真摯に受け止め、より一層良質な放送が求められているのではないでしょうか。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。