筆者の主張はおおむね支持できます。要は習近平指導部自体が、多様なアジェンダを有機的に統合できておらず、それらを矛盾なく実施することは、ほぼ不可能だということです。中国の指導者にとり最大の関心事項は、国内の統治にあり、その成否の鍵は経済の持続的成長にあります。そのために協調的な国際関係が不可欠なのですが、しかし成果が経済成長だけになれば、江沢民、胡錦濤と同じことになります。ですから「政治目標の実現」を打ち出しながら、筆者が指摘するように、それは「政治的賭け」となります。しかもそれは「協調的な国際関係」を損ないかねません。実に微妙なハンドリングを求められているのです。
例えば党大会における報告の中で欧米を刺激する言葉がありました。それは「中国の特色ある社会主義が新しい時代に入ったということは、…開発途上国が現代化に向かう道を切り開き、また発展の加速化と独立の保持を望む国や民族に対し、全く新しい選択の道を与え、人類の問題の解決に対する中国の知恵と中国の回答を与えたことを意味する」という部分です。ある意味で欧米に対するイデオロギー的な挑戦を示唆してしまいました。
さすがにまずいと思ったのか、12月1日に開催された中国共産党と世界の政党との国際会議において、習近平は「中国は外国モデルを輸入しないし、中国モデルを輸出もしない。他国に中国のやり方をコピーしろと要求することもない」と強調しました。諸外国の反応を気にしていると言うことです。習近平の困難な国内外の舵取りは続きます。
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