オトナの教養 週末の一冊

2018年1月25日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

 また、今すでに人工知能の話題は、不安をあおるような形で報道されたり、極度に単純化されて伝えられたりすることが多い印象です。先日も、私の本を読んでくださった方から、「他の人工知能に関する本と書いてあることが違う」という指摘を受けました。今の人工知能は、関わる範囲が広くなりすぎて、とても一人の人間が全体像を把握できる状況にはありません。そのような中で、専門も興味も異なる多くの人がさまざまな立場から意見を発信するので、混乱が起こるのも無理はないと思います。そういったことに惑わされず、今本当に何が起こっているかをできるだけ正しく見極めるためにも、勉強を怠ることはできないと思っています。

――もっと過激なものだと、「人類が人工知能に支配されるのではないか」という論調まであります。

川添:昨年、Facebookが開発した2体の人工知能が、人間が理解できない言葉で会話をはじめたと報じられ、人間を滅ぼす準備をしているのではないかという憶測まで飛び交いました。この研究自体は、どうやら「言葉を使った交渉」という行為を、将棋のような勝ち負けのあるゲームとして捉えなおして、そこで適切な行動がとれる機械を作るものだったようです。非常に面白い研究なのに、それが意図せざる形で話題になってしまったのは残念です。

 人工知能が私たちのように意志や欲求や計画性を持ち、それに従って人類を滅ぼす可能性があるか、と尋ねられれば、そこまで技術革新が進むには相当な時間と労力を要するでしょうし、現状の技術だけではほぼ不可能ではないかと考えています。それよりも、一部の人が悪意を持って人工知能を利用し、人々の考えをコントロールしようとしたり、他人の自由を不当に制限したりすることがないよう備えるのが現実的だと思います。

――6月に出版されて半年経ちますが、どのような反響がありましたか?

川添:「安心した」という声が意外に多くありました。これだけ多くの人が、人工知能に対して怯えているのかと、非常に驚きました。ただ、私としては、安心してくださいというよりは、現状ではこういうことができて、こういったことはできないということを、できるだけニュートラルな立場で伝えられればと思っていました。

――どんな人に本書を薦めたいですか?

川添:この本では、人工知能の素人であるイタチを聞き役にして、それぞれの分野の専門的な話を、モグラをはじめとするさまざまな動物に担当してもらう構成にしました。比較的読みやすいと思いますので、人工知能と言葉について知りたいと思っている人に気軽に読んでいただければと思います。中には、お母さんがお子さんに読み聞かせているという話も聞きます。特に若い人にとって、これからの時代、人工知能は避けて通れない存在ですので、そういう人々に向けてのヒントになればと思います。

 また、この本をきっかけにして、言語学者からの意見の発信が増えればと思います。人工知能がニュースになると、さまざまな分野の研究者が発言しますが、言語学からの発言はまだまだ少ないと感じます。言語学者は、言葉の複雑さを嫌というほど知っていますから、そのあたりが世間にもっと認知されてほしいという気持ちがありますね。
 

  
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