海野素央の Love Trumps Hate

2018年5月7日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

米朝首脳会談の本当の罠

 韓国大統領府高官によりますと、首席補佐官会議で文氏は「トランプ大統領がノーベル平和賞を受賞するべきだ。われわれは平和をもらえばいい」と発言しました。この文氏の発言に関するホワイトハウスの記者団からの質問に対して、トランプ氏は「(文氏は)非常に寛大だ。感謝している」と極めて肯定的な反応を示しました。

 トランプ大統領はこれまで北朝鮮の核・ミサイル開発の問題は「歴代の米大統領がずっと前に解決するべきものであった」と繰り返し主張してきました。バラク・オバマ前大統領は2009年にノーベル平和賞を受賞しましたが、8年間の任期中に北朝鮮問題を解決できませんでした。そこで、オバマ氏をライバル視しているトランプ氏は、是が非でも米朝首脳会談の機会を生かし、「平和的解決者」の演出をしてノーベル平和賞受賞のポイント稼ぎをしたいわけです。

 ただトランプ氏がノーベル平和賞受賞に対する意欲を強めると、それに伴い懸念材料が発生します。前述しましたが、同氏は北朝鮮との合意を最優先して、骨抜きの合意にしてしまう可能性が十分あります。

 その後で、米朝の実務者レベルに丸投げをします。ところが、合意内容は良さそうに見えても細部でうまくいかなくなり、結局実務者レベルで手詰まり状態に陥るリスクが増加します。

 正に、「悪魔が細部に宿る(The devils in the details)」です。「あらゆる細部に落とし穴が潜む」という意味で、合意後に思わぬ落とし穴が待ち受けているのです。

 トランプ大統領がノーベル平和賞受賞に色気を出したために、この罠にはまるリスクが高まったのです。トランプ政権は、北朝鮮が罠を仕掛けてくるのではないかと懐疑的です。しかし、同政権が本当に懸念しなければならないのは、トランプ氏の「ノーベル平和賞欲」があまりにも強いことから生じた罠の方なのです。

  
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