2024年11月23日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年5月29日

 パレスチナ、イスラエルの首相の双方から、日本のイニシアティブとして評価されたのが、「平和と繁栄の回廊」構想である。この構想は、日本、パレスチナ、イスラエル及びヨルダンの4者が協力し、ヨルダン渓谷の社会経済開発を進め、パレスチナの経済的自立を促す中長期的取組で、2006年に始まった。今回4月29日、河野外務大臣は、訪問先のヨルダンで、「平和と繁栄の回廊」構想第6回四者閣僚級会合を開催した。ヨルダンからはファーフーリー計画・国際協力大臣、イスラエルからコーヘン経済産業大臣、パレスチナからマーリキー外務庁長官がそれぞれ出席し、河野外務大臣が議長を務めた。会合では、本構想の旗艦事業であるジェリコ農産加工団地(JAIP)の発展を推進し、JAIPとアレンビー/キングフセイン橋間の物流環境を整備することが話し合われた。

 この時期に、パレスチナ、イスラエル双方の閣僚が集って、共同プロジェクトを語ることが出来たこと自体が、外交的には特筆すべきことだろう。その場所をヨルダンが提供し、そのアイデアを日本が出したと言うことである。

 安倍総理は、JAIPからヨルダン国境までのアクセス道路建設への支援と、その早期着工への期待を、パレスチナ、イスラエルそれぞれの首脳に表明した。

 地味で道のりの長い「平和と繁栄の回廊」構想であるが、10年以上続く、この四者会談の場が、中東和平の当事者間の対話の機会を提供しているならば、それだけでも意義のあることだろう。あまりメディアでは報道されない所に、意外と重要な日本外交の役割があるのかもしれない。
 
  
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