2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2018年7月20日

都市部以外のインバウンドとの向き合い方が問われる時代に

篠崎宏:今後、大きな変化がありそうなのが、農家民宿。市場がどこまで広がるかに関心があります。日本人は年間に2泊と少ししか宿泊しないが、フランス人は15泊くらいする。彼らは農村に行って、一軒家に一週間くらい泊まって風景を楽しむ。日本もこれから変わり目になってくるんじゃないかと思っています。

 いよいよ、都市部じゃないところがどう本格的にインバウンドに取り組むのかが問われるようになってきた。SNSを介してどんどん世界中に発信もされます。和束町の茶畑のように、あそこまで景観が立派だと外国人も行きたくなる。そういう時代になったんじゃないかと思います。

京都おぶぶ茶苑の茶畑(同社提供)

山口亮子:交通と宿泊はどういうふうになっているのでしょう。

平田真一:うちは公共交通手段がないので、基本的にレンタカーか、タクシーか、観光用のチャーターバス。うちに今、ドイツ人が泊まっていて、自転車はどこに行ったら借りられるかと聞かれた。8キロ先のパン屋に行きたいから自転車を借りたいと。「8キロ自転車で行くんかい」と思ったんですけど、向こうの人だと普通みたいで。これからは自転車も車もシェアリングのような手段を使う時代も来るのかなと、篠崎さんの話を聞きながら思いました。

松本靖治:個人旅行のお客さんは、うちに来てもらうには、10キロ先の最寄り駅から1時間に1本以下のバスに乗ってもらうしかない。それに乗れないとタクシー。うちのサイトには詳細なアクセスの案内を載せているんです。それを片手に来ること自体が冒険みたいな。もう、着いた時にはみんな、「やったー、ここまで来た!」みたいな。

行きやすいのはむしろマイナスポイント!?

 観光って、皆さんも経験があると思うんですけど、困難な場所に行った時の方が、よう覚えてる。行きやすかったっていうのは、むしろマイナスポイントになるんじゃないか。だから、僕らも自分のところをマチュピチュとかそういう表現を使っていたりする。着いてよかったと泣いて喜ぶ。行き方を間違ってこれなかった人も、たくさんいますよ。

 宿泊については、和束町はここ5年ほどで宿泊できるところができてきた。その前は青少年山の家しかなかった。その施設が観光向けの旅館になって、あとはゲストハウスが二つできました。一晩で泊まれるのは50人以下ですかね。これが増えていくともっと深い体験ができるようになるのかなと思っています。

 2016年の統計だと3055人の外国人が和束町に来て、うち1000人くらいがうちに来ています。その人たちは、ほとんど日帰りなんですけどね。もうちょっと泊まれるようになれば数字がもっと変わってくると思いますね。

リンゴ狩りに訪れた台湾客(平田観光農園提供)

平田:うちは島根の玉造温泉に行くか、広島市内に宿泊するかで、果物狩りは基本日帰りですね。周りで宿泊とかはやっていないですけど、篠崎さんのおっしゃるように、これから中山間地は空き家だらけなので、そこをリノベして一棟丸貸しでという流れには持っていきたいと思っています。

松本:観光業って、宿泊とどれだけマッチングできるかが大事なポイントで、僕らもツアーとか、観光のアクティビティも進めているんですけど、最近はその付帯事業として宿泊も進めようということで、空き家を2軒ぐらい借りて、そこに泊まれる仕組みにはしていっている。でも宿泊業の資格を取るのは大変なんですね。だからまず大家業をやって、一か月以上住む人から受け入れている。

平田:テック的に言うと、決済はまだまだ遅れていて、クレジット決済ができない観光農園もいっぱいあったりする。それってどうなのって、外国人は思っているでしょうけども。

篠崎:日本のキャッシュレス決済比率はまだ2割程度。特にクルーズなんかはパッと来て、パッと買い物して次のところに行きますから、キャッシュレス対応していないと、まず地元にお金が落ちないですよね。でも観光農園、直場所はほとんど使えない。使えると、1人当たりの客単価が確実に上がるんですけれども、使えない。非常にもったいないと思いますね。


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