世界で火花を散らすパブリック・ディプロマシーという戦い

2018年8月3日

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桒原響子 (くわはら・きょうこ)

日本国際問題研究所研究員・未来工学研究所客員研究員・京都大学レジリエンス実践ユニット特任助教

1993年生まれ。2012年米国ウエストバージニア大学において、国際政治学や通訳翻訳等を学び、2017年大阪大学大学院国際公共政策研究科修士課程修了。笹川平和財団安全保障事業グループ研究員、外務省大臣官房戦略的対外発信拠点室外務事務官を経て、現職。専門は、国際公共政策、パブリック・ディプロマシー、ストラテジック・コミュニケーション、メディア研究、世論等。

PDに安全保障の視点を

 もちろん、日本政府もその努力はしている。その一つが、有識者の知見を得ることである。現在、外務省のなかにジャパン・ハウスに係る有識者諮問会議が設置されており、学識者をはじめ、デザイン、食、美術、メディア、経済、伝統芸能、科学技術などのあらゆる分野の専門家の代表が集って、対象国におけるニーズやPDの効果について協議が行われている。

 今後は、各国内で情報拡散の中核となる若年層をターゲットにするために、各業界のトップのみならず、現場の事情に詳しい実務家や新しい発想が期待できる若手の専門家などの投入も検討してはどうだろうか。

 日本のPDの根幹ともいえるジャパン・ハウスは、当初計画から3年ほどかけてオープンしたばかりだが、世界にも類を見ない対外発信拠点はすでに日本の魅力を強力に発信し始めている。実際、オープンから今年7月中旬までの調査では、来場者数は、サンパウロ館が92万人、ロサンゼルス館が6.5万人、ロンドン館が5.7万人となり、各館順調な滑り出しとなったという。特にサンパウロ館は、1年間で当初目標の13.6万人を大きく上回る77万人となった。今後も、各館全てが軌道に乗ることに期待が寄せられる。

 しかし、全館の総合プロデューサーで、ロンドン館のデザイナーの原研哉氏は、オープニングで、訪れた外国人に「ステレオタイプでなく『新しい日本のにおい』を感じて欲しい」と語っているが、現地住民に「日本の新しいにおい」を感じてもらうためには、オールジャパンでのさらなる努力が必要である。

 さらに、日本のPDには安全保障の視点を加えるべきではないだろうか。先に紹介したように、日本のジャパン・ハウスのオープンには、米国における中国および韓国のPDの活発化と、日本のプレゼンスの相対的な低下も関係している。中国および韓国のPDは歴史問題を大々的に扱い、日本の安全保障にすら影響を与える可能性があるからだ。

 次の機会には、その中国および韓国のPDの展開と日本への影響について紹介することとしたい。
 

  
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