食料品店では日本製品もかなり充実
それでは、物流はどうであろうか。先述のブダコフ氏によれば、小売の収入は7億500万ルーブル、飲食関係の企業9つの収入は9億ルーブルと、お金の流れも活発だという。実際、以前は、商店に商品がほとんどなかったと聞いているが、食料品店の品揃えもかなり充実していて、驚かされた。特に日本の調味料やお菓子が極めて充実していて(写真)、ここは日本かと錯覚するほどの品揃えであった。ちなみに、日本製品は、ロシア極東のウラジオストク経由で入ってきているという。とはいえ、服、文具、雑貨などの品揃えは全く充足されておらず、若者が服などはサハリンに買いに行くと話していた。
それでも概して現地ロシア人はとても豊かそうに見えた。筆者は現地の新聞社『ナ・ルーベジェ』(国境にて、という意味。1947年11月27日発刊)への訪問となったため(ここでは主に、第25代編集長のセルゲイ・キセリョフ氏と副編集長のワシーリ・カセンコ氏から話を聞いた)、一般家庭を訪問する機会は得られなかったのだが、一般家庭を見た訪問団の方々は皆、素晴らしい豪邸で、日本の最新式の電化製品を備え、とても豊かそうな生活を送っていたと口々に話していらした。
給与、年金など、島ならではの恩恵も
このように人口も着々と増えている北方領土であるが、6割程度と高い流動性があり、「知らない現地ロシア人」が多いという声を多数聞いた。なぜ、このような高い流動性が生まれるのか。
まず、流入については主に2パターンあり、まずは政府などの命令や軍などの配属によるもの、次に、島に住むことによって得られる恩恵の高さや身内が先に移住していたことなどから自主的に移住を希望したものである。命じられて島に移り住んだ人でも、北方領土を気に入って、住み着く人も少なくないという。
それでは島ではどのような恩恵を受けられるのだろうか。現地の様々な人に話を聞き、それらの情報を総合したのが以下のような内容である(ただし、海外からの出稼ぎ労働者には適用されない)。
・給与は本土の3~4倍以上。職種や条件によっては、6〜7倍になったという声も。
・年金は、本土よりも5年以上早くもらえる(職業によっても違うようである)
・島に15年以上住んでいると、受給できる年金額が高くなる
・国家公務員、軍人、元軍人などは、2年に1度、家族も一緒に本土に政府負担で旅行に行くことができ、そこから海外旅行に行くことも可能
このような恩恵は非常に魅力的で、それが故に、最初は上から命令で北方領土に移ったものも、そのまま住み続けるものが出てくるのだという。現地ロシア人と話をする際には、必ず出身地を聞くようにしていたが、島で生まれたという人は若い層に限られていて、出身地として多く聞いたのは、ウクライナ、ロシアのシベリア地方(ハカス、アルタイ、トゥヴァなど)と北コーカサス地方、南コーカサスのアゼルバイジャン、ジョージア、アルメニアであった。