子どもの自死が多いのは、夏休みの後半から休み明けにかけて。その中には、いじめを苦にしての自死も少なくない。いじめ事件が報道されるようになって久しいが、現代の社会はまだこの問題を解決できていない。『いじめで死なせない 子どもの命を救う大人の気づきと言葉』(新潮社)は、20年以上にわたって記者・キャスターとしていじめ問題を取材してきた日本テレビの岸田雪子さんの一冊。岸田さんが取材現場からすくい上げてきた被害者やその家族の言葉から、大人が子どもとどう向き合うべきなのかを考えさせられる。どの子どもも、いじめの被害者にも加害者にもなる可能性があることを知ってほしいと、岸田さんは言う。
1970年東京都生まれ。早稲田大学法学部を卒業、東京大学大学院情報学環教育部修了後、日本テレビに入社。報道局社会部文部省(現・文部科学省)担当記者、政治部自民党担当記者を務めた後、ディレクターとして「真相報道バンキシャ!」「NEWS ZERO」の立ち上げに関わる。2004年より報道キャスターとして「ズームイン!! SUPER」「ザ!情報ツウ」「スッキリ!!」「DON!」などのニュースコーナーを担当、BS日テレ「深層NEWS」のメインキャスターも務める。「情報ライブ ミヤネ屋」で宮根誠司氏との軽妙な掛け合いが話題となった。2017年からは報道局解説委員として、再び文科省記者クラブを担当。育児中の日本テレビ社員らで作る子育て支援プロジェクト「ママモコモ」でも活動している。
「いじめの認知件数は多くていい」
――岸田さんはこれまで20年以上、いじめ問題を取材されています。20年前と比べて変わったことはありますか。
岸田:相談の体制づくりはある程度は進んできていると思います。20年前はそもそも電話相談窓口が、「いのちの電話」のようなものしかありませんでした。子どものための「チャイルドライン」が全国に普及し、今はLINEなどSNSでの相談体制もあります。あとは、政府が「いじめをどんどん見つけて」「いじめの認知件数は多くていい」という意識を持つようになったことが変化だと思います。
――「いじめを減らせ」では、問題が表面に出てこなくなるだけだから「見つけろ」と。
岸田:はい。ただ、それが現場で浸透しているとは言えません。政府がそのような姿勢を取ることはもちろん重要ですが、日々子どもたちのトラブルと接する教師や教育委員会には、まだ「いじめがあると学校の評価が下がる」と考え、いじめを見て見ぬふりをしてしまうことも多いのです。変わってきている学校も増えてきていますが、変わっていない学校もあります。
――変わる学校と変わらない学校の違いは何でしょうか。
岸田:取り組もうとする校長先生がいるかどうかが一番大きいと思います。なおかつ、先生同士で情報を共有するチームワークを作れているか。担任の先生1人だけでいじめを把握し、対処するというのは無理があります。