EC市場が2020年にはおよそ2.6兆円になろうとしている中で、リアル店舗の売上は年々減少し、閉店も多数見かける厳しい状況になっています。小売業界においてブランド価値を高めるためになくてはならない店舗ですが、その活性化が叫ばれながら急速に変化する市場に対応できていない企業もまだまだ多いのではないかと感じています。
そんな中、イオン、阪急百貨店の大規模店舗から、ナノユニバース、アーバンリサーチ、ユナイテッドアローズ、ファミリア、レナウン等々、日本を代表する小売業界の企業から幅広く支持されている会社、空色。空色では変化するお客様の行動を的確に捉えながら、リアルとデジタルを融合した新しい「接客」のモデルを構築しています。同社のweb接客ソリューション「OK SKY」から今後の変わる顧客体験について中嶋洋巳社長に話を聞きました。
小売業界の現状と課題
小売業界において重要な販売チャネルである店舗で働く店舗スタッフは、商品陳列、レジ対応、売り場の案内等々、接客以外にもやるべきことが沢山あります。お店で店舗スタッフを見かけても、「接客」ができない、できていない場面を見かけます。また、非常に良いことですが、産休や育休の制度が整ったことで休暇を取る販売スタッフも増え、さらに店舗勤務希望者の減少を背景に採用難も重なり、店舗労働力自体が枯渇しています。
多様化したお客様ニーズに対応すべく多様な品揃えを実現した結果、購入意思決定の回避というお客様心理が働いてしまい、逆に購入率を下げてしまう場合や、店舗スタッフに対応してもらえない不満を持つお客様、逆にリアル店舗での接客を望まないお客様、店舗で商品を確認しECで購入するお客様等、様々な変化が起こっているそうです。
今後フリーマーケットアプリのようなCtoCサイトも拡大が予想され、売上を獲得する役割としての店舗と競合するチャネルは増加するため。改めて店舗を持つ意味や可能性、その働き方を見直す時期に来ているのではないかと感じています。
変わる「接客」とは
「店舗で1人のスタッフが1時間に接客できる人数は何名ぐらいだと思いますか?」と、中嶋さんは問いかけます。
「しっかり接客をすると、1人〜3人程度が限界だと思います。接客の合間にレジや電話対応に追われ、接客時間を確保するには人を増やす以外の選択肢が考えにくい状況です。接客時間の不足やEC化による店舗売上の減少は、店舗スタッフの接客レベル低下を起こすだけでなく、キャリアビジョンが見えづらくなる可能性を生じさせており、接客が楽しくて入社した大事な社員の退職にも繋がっています」
と話します。同社の「接客」窓口である「チャットセンター」では、1人の接客担当者が1時間あたりで最大20人の問い合わせに対応できるため、担当者は店舗以上に接客に集中でき、企業のコストメリットも大きいそうです。
同社の提供するソリューションは、販売チャネルを横断したお客様体験の実現を目的に、接客ツール「OK SKY」、チャットセンター、一部接客の自動化を行うAIチャットボットの3つから構成されています。
単純にシステムだけを提供するのでなく、実際にチャットセンターを保有・運用しているため、導入企業に代わって接客を実現できることが強みであり、熟練した人と学習していくAIの両軸で、接客効率の向上を実現し、導入企業と伴走しながら、結果を追求しています。
冒頭の導入実績として有名企業を並べましたが、続々と大手企業から引き合いをいただけている理由は、どこにあるのでしょうか?
大きく3つの理由があると考えています。
- 導入支援=多くの企業が導入目的の設定、KPIの設計、会話の設計に悩まれます。空色では独自の手法を確立しているため、運用時のリスク低減だけでなく、導入後の展開設計まで行なっています。
- 運用支援=導入時に設計したKPIを指標に、運用状況から改善提案まで支援しています。会話ログデータを分析し改善点をご提案することで、円滑な意思決定をサポートします。
- 導入効果=チャット接客からの購入率が最大30%。購入する利用者の40%は店舗に来店。チャット利用者の30%がリピート化。
チャットツールは日々新たに登場しているので、お客様向けの新機能だけでなく、接客者向けに弊社スタッフがサポートしている支援機能を提供できるよう、開発を進めています。
この変化に小売業界が注目するのもうなずけます。この実現の理由を、中嶋さんは、「導入企業様とお客様と信頼関係を構築できている証しです」と話します。実際、お客からは「以前答えていただいた方もとても親身に提案してもらい、無料でこんなに相談して良いのだろうか! とまで思ってしまいます」という声をもらっているそうです。店舗では当たり前だった無料の接客を、WEBサイト上で実現することでお客の満足度を引き上げているのです。
これからのリアル店舗の方向性を、「売上だけでなく『ファン』と『お客様情報』を獲得する『メディア』の役割も担わなければなりません。接客ログから感じるのは、お客様は店舗かECサイトかを時と場合によって選択されていることです。オムニチャネルという言葉は昔からありましたが、お客様は既にオムニチャネル化されています。お客様の購買行動に適したチャネル運営を実現するためには、店舗は売上だけを追うのではなく、新規顧客とお客様情報の獲得を通じてECサイトと連携を取らなければ、お客様を逃すリスクが高まってしまいます。
IT技術を活用しチャネルを横断した購買体験を実現しなければ、小売業界、特に店舗が現状の厳しい局面を打破できない可能性があります、既に改善に着手されている企業は来年から益々店舗へのデジタル投資を加速されています」と中嶋さんは語ります。