Wedge REPORT

2018年12月27日

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――VRは企業の生産性向上にも寄与するということでしょうか。

 

廣瀬:すでに訓練での活用で生産性向上に寄与しています。ある航空会社では、VRシミュレーターによってパイロットの訓練時間が通常の訓練と比較して半分近くに減ったという事例があります。パイロットのような身体的なスキルを身につける場合、教科書など「二次元」で学ぶのと実際に体験するのとでは効果が大きく異なります。

 建設業界では、通常だと実物大のモックアップ(模型)を作って行う訓練をVR空間で行う企業が出てきており、その建設費用や、各地から訓練施設に向かう受講者の移動費用などを削減しています。

 

土居:試作品の開発や訓練での活用は、今後も生産性向上に期待が持てますね。資金力がない中小企業やベンチャー企業などでも試作品を仮想で作れると、低コストで製品開発が可能となり、イノベーションも起きやすくなります。

 また、働き方改革でテレワークなど業態の分散化が進む中、VRを使うことにより簡単に複数人が同じ空間の中に集まり、同じ製品、イメージなどを見ながら会議をすることができ、より効率的な働き方ができるようになるでしょう。

――生産性向上以外の面で、VRが社会にもたらすメリットはありますか。

廣瀬:メンタルへの影響などは新しい話題でしょう。VRの世界では、ユーザーは自分自身の姿をかたどったアバターとして行動することになります。心理学者によれば、そのアバターの表情や外見を変化させることで、本人の精神状態や振る舞いを変化させることができるようなのです。

 これを利用すれば、精神的にふさぎ込んでいる人やコミュニケーションが苦手な人、元気がなくなった高齢者などの活力を引き出すことも可能になっていくでしょう。

土居:日本では増加する社会保障費が深刻な問題となっていますが、例えば介護分野において、VRによる視覚的な情報を使って心理面へアプローチすることで被介護者の活力を生み、要介護度の改善につなげるような取り組みはどんどん広がってほしいと思います。

 こうした視覚的な情報を活用した新たなケアは、特段の規制もなく自由度が高いため、効果が確認できれば医療・介護分野で導入が進んでいくのではないでしょうか。

廣瀬:そうした情報的アプローチと物理的アプローチとの組み合わせは新しい介護の形になるかもしれませんね。例えば、認知症になる一番大きなリスクファクターはコミュニケーション不足だと言われています。

土居:現在では、介護保険が適用になるのは介添えや入浴補助、リハビリなど、物理的なサービスがメインですが、VRのようなソフト面での介護サービスと、それがもたらす効果が分かれば、介護保険制度に該当するケアの一類型として位置付けられるようになるかもしれません。

 専門医不足などを背景として18年4月からオンライン診療が保険適用になるなど、医療分野ではIT技術を活用した新たなサービスへの保険適用が認められ始めており、可能性は十分にあると思います。

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