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2019年7月20日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

デザイン、発想を実現するツール

名刺入れなどが並ぶ店内の棚、奥に見えるのは「レインジャケット」

 東京・京橋の複合商業施設「京橋エドグラン」の1階に「ポスタルコ」の直営店がある。04年に京橋にショップを開いた後、12年に渋谷に移転。再開発でビルが完成した16年に再び京橋に戻った。ステーショナリーだけではなく、バッグなども置くガラス張りの店舗はオシャレな高級有名ブランド店ばりだ。

 一見、輸入品を扱っているようだが、初めての来店客は「日本の職人の手作り」と聞いて一様に驚くという。

 京橋はショールーム的色彩が強い。「ポスタルコ」は初めから「世界」を視野に入れた販売を展開してきた。使い心地の良いものに対する興味は全世界共通だと考えたからだ。インターネットの普及で、オンラインショップが俄然(がぜん)力を発揮した。

 いま、売り上げの半分近くは海外からの注文だ。ウェブサイトはオシャレだ。製作までのストーリーやデザイナーとしての思いがつづられている。もっぱら友理さんの得意分野だ。

 「ポスタルコ」の最新作は「モーグルスキーチェア」。北極圏で使う犬ぞりの形から着想を得た。家具にも領域を広げるに当たって、本物の木の家具にこだわる「カリモク家具」とコラボレーションした。

 カリモクと組めばより良い木材を調達でき、イメージ通りのイスが作れると考えたからだ。受注生産方式で販売する。

 「ポスタルコのお店自体を大きくしようとは考えていません」

 と、友理さん。ポスタルコはあくまで、自分たちのデザインをモノとして実現するひとつのルート。他の企業などとのコラボレーションに力を入れ、自分たちのデザインや発想がより多く実現すればよい。そう考えているようだ。

ロゴには「P」という形の翼を持つ伝書鳩。最初にショップを構えた東京・京橋のビルの屋上には鳩舎があった

 大量生産、大量消費の時代は、「良いものをできるだけ安く」という理念でモノづくりは進んできた。だが、世の中が豊かになり、モノが有り余る時代になって、そうした理念はデフレを加速させることになった。

 その反省もあって、「本当に良いものを作り、きちんとした値段で売る」流れが強まってきている。消費者も、価格一辺倒ではなく、「長く使えるものなら、少々高くても、本物がいい」という志向に変わってきた。

 「ポスタルコ」の品々はそんな日本社会の変化にフィットしていると言えそうだ。

写真・湯澤 毅

  
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◆Wedge2018年11月号より

 

 

 

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