――その後、日本代表はどのように変わっていきましたか?
村田:世界は1995年からオープン化といってプロ化していきましたが、日本は相変わらずアマチュアリズムの理念が強くプロ化は認められなかった。ですが、W杯後に行われた日本代表合宿から体制が変わりました。
監督が山本巌さんに替わり、オーストラリアのエディー・ジョーンズさんとグレン・エラさんというコーチが招かれ、日本代表が世界のスタンダードに取り組んでいくスタートになったと思います。ここから日本代表の練習がかなり厳しいものへと変わっていきました。
その後、監督が平尾誠二さんに替わって体制が一新。外国人選手を積極的に起用して強化をはかり、スクラムハーフには私がレギュラーとして起用されるようになりました。しかし、その後グレアム・バショップとジェイミー・ジョセフというニュージーランド代表の二人を招聘することになって、バショップと広瀬佳司という手堅く試合を運ぶハーフ団でW杯に臨むことになりました。
ラグビーは多様性に富んだ競技で、ニュージーランドのオールブラックスも同様ですが、外国人選手と自国の選手が共にその国の代表を構成するのが文化です。日本代表もそうした流れを取り入れ強化を進めていくことになりました。
――1987年に第1回W杯が開催されて以降、回を重ねるごとに進化を遂げる世界のラグビーを体感されてきたような現役時代ですね。
村田:そうですね、まさに、世界の流れを見て感じてきました。それが私自身の成長を促してくれましたし、プロ選手としてフランスのクラブチームでプレーするキッカケになりました。
私は現役引退後、7人制ラグビーの日本代表監督を務め、その後、現在は専修大学の監督を務めていますが、あの大敗によるどん底を味わったことをはじめ、様々な経験を生かして選手の成長とチームの強化に生かすことができていると思っています。
ラグビーワールドカップ2019の見どころ
――ここからはW杯日本大会についてお聞きします。今大会の見どころを教えて下さい。
村田:それは強くなった日本代表を見ていただくことです。
現在の日本代表は、前回大会で優勝候補の一角南アフリカに勝利するなど、長い準備と様々な経験を積みながら強くなってきました。その要因はエディー・ジョーンズという前回大会のヘッドコーチ(HC)が、勤勉で我慢強い日本人の特性を知り、その特性を生かしたチームを目指して、あらゆる可能性と準備を重ねた結果生まれたものです。
それは世界一と言われたほどハードなものだったと思いますが、選手もスタッフもやり切ったからこその勝利だったはずです。
その間に選手一人ひとりが世界で戦えるほど成長しました。その財産が現在も日本代表に残り、現HCのジェイミー・ジョセフに引き継がれ、さらなる強化が進んでいます。
このジェイミー・ジョセフという人は元ニュージーランド代表で日本でもプレーをした経験があり、指導者としてはスーパーラグビーでハイランダースを優勝させた実績を持っています。その人が日本代表にキックオプションという選択肢を持たせて攻撃の幅を広げ、いまそれが実りつつあるところです。
その強くなった日本代表をぜひ見ていただきたいと思います。
――日本代表の魅力を教えて下さい。
村田:日本人選手と帰化した外国人選手がひとつになって、共に日本代表として身を挺してボールを奪い合う姿は見ごたえのあるものですし、その奪い取ったボールをウイングの福岡堅樹選手のようなスピードのある選手たちが走り込んでトライを奪うシーンを見て欲しいですね。
現在の日本代表には魅せる選手がたくさんいます。前回大会の南アフリカ戦を見ながら涙が流れたのですが、あのときの感動をぜひ日本で、それも大勢の人たちといっしょに味わいたいと思っています。