2023年2月7日(火)

迷走する日本の「働き方改革」への処方箋

2019年2月20日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

鳩山氏が憧れたブルネイの正体

 資本主義は競争による流動性に富んだ社会制度であるのに対して、社会主義(共産主義)はその正反対で競争を排斥する非流動性社会である。

 資本主義や民主主義の下で築き上げた富と権力を既得利益として確保するには、ある意味で流動性よりも非流動性のほうが都合が良い。さらに、特権階級の支配者地位を既得利益化し、その既得利益を固定化・肥大化・恒久化するには、資本主義の民主制度よりも社会主義の独裁制度のほうがはるかに都合が良い。

 財力と権力、人間が目指す究極のダブルパワーを一度に担保するには、社会主義(共産主義)しかない。目を向ければ、ブルネイはほぼすべての条件がそろっていた。

 税金を課さない。聞こえは良いが、世の中はそんなに甘くない。税金とは一旦国民に帰属した富を再度、国家が取り上げる公共コストである。そこでいくら税金を取られたか、誰よりも国民自身が身をもって感じている。その実感から、国民は自ずと税金の使い道にも口出しする。

 無税社会とは、税金を課さない代わりに、一次取得富から国家や支配者が勝手にその分を「源泉」控除してしまう、という国家天引き型である。そこに極めて透明な監督制度がなければ、どんぶり勘定で国民搾取の原点となる。「金は国民の皆さんのために使います。余った分は国民の皆さんのために積み立てておくからね」というのがブルネイ。

 そのうえ、絶対王権である。そんなブルネイの政体と社会構造に、羨望の眼差しを向けたのが鳩山氏だった。

不平等や格差は雲の上にあればよい

「ブルネイは世界でも屈指の金持ち国家」というが、それは国・国王と一部の特権階級の話であり、広義的な国民全体ではない。一般市民は至ってごくごく普通の生活を営んでいる。市内を走る車もシンガポールや香港、クアラルンプールと比べて高級車の絶対数が断然少ない。ただ他の東南アジア諸国と比較すると、貧困層も少ないのが特徴である。

ドームブルネイのモスク、ウォーターヴィレッジのコントラスト(iStock Editorial / Getty Images Plus / Sophie_James)

 社会保障完備で公務員を中心とする格差の小さい国、ブルネイ。これが非常に重要なポイントだ。ある意味で平均的な理想像として、日本人の価値体系に近いかもしれない。


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