2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年2月28日

 新疆ウイグル自治区におけるイスラム教徒が大変を占める少数民族ウイグル族に対する中国当局の弾圧は苛烈を極めている。かつて、ウイグル族が短期間ではあるが独立国家を樹立したことがあるという歴史的経緯もあり、中国当局は、新疆ウイグル自治区を「核心的利益」と位置づけ、ウイグル族の分離独立運動を抑えることに躍起となっている。100万人以上のウイグル族が「再教育キャンプ」に収容され拷問や政治的洗脳を受けているという事態は、国連でも認定されており、上記トルコ外務省声明が言う「人類にとっての大いなる恥」というのは、決して誇張ではない。

 トルコは、これまでも中国当局によるウイグル族への弾圧を何度か問題提起している。2009年にはエルドアン首相(現大統領)が弾圧について「ある種の虐殺」と非難し、2015年には中国から逃れてきたウイグル人難民に避難所を提供したこともある。トルコ自身の人権侵害はどうなのかという問題はあるが、イスラム教国の大国であるトルコが問題提起をすることには意味がある。

 イスラム世界に中国のウイグル族弾圧への批判が大きく広がっていく兆候は、今のところ見られない。やはり「一帯一路」など中国との経済関係への配慮、それに、自分たちが人権侵害をしているという弱みがあるためであろう。なお、ワシントン・ポスト紙のジョシュ・ロウギンの2月13日付けの記事‘Will the United States support Malaysia’s fragile democratic experiment?’によれば、マレーシアの次期首相予定者アンワール氏は、ウイグル族弾圧について「中国は説明しなければならない。これはウイグルのみならずイスラム世界の悲劇である。100万人がすべてテロをしているとは到底言えない。問題は多くの国が沈黙していることである。ほとんどのイスラム諸国はウイグルのために北京に抗議できない。なぜならば彼ら自らがその市民の扱いを誤っているからである。イスラム世界には統治と説明責任の問題がある」と述べている。インドネシアでも野党の大統領候補の陣営がウイグル族弾圧につき問題提起しているようである。こうした動きに注目していく価値はあると思われる。
 

  
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