ヘイトスピーチや、それに準ずる発言や行為は、集団によるデモ等の運動に限らず、ネット上でも目立ってきている。本年3月には、日本年金機構所長がツイッターで韓国人に対する人種差別的なツイートをしたことが問題となっている。
また、メディアが日本国内にある韓国文化やK-POP等の流行ぶりを特集して番組等で取り上げる度、SNSは大炎上する、という事態が生起するようになっている。最近では、NHKの番組「あさイチ」の2018年4月3日の放送回で、中高生の間で韓国カルチャーが流行している実態が取り上げられ、特集された。しかし放送後、SNS上で、番組で取り上げられた内容が「うそ」や「でっちあげ」であるといった論調で大炎上してしまった。
もちろん日本国民全員が当てはまるというわけではない。しかし、先に述べたような実態を見てみると、情報通信技術の発展の影響もあるのかもしれないが、日本はまるで「反韓ムード」一色であるかの印象さえ受ける。
しかし、日本における反韓は今に始まった事ではない。たとえば1973年の金大中事件の際の韓国叩きだ。この時の反韓は政治レベルだったという分析もあるが、近年は必ずしもそのようには見受けられない。もちろん、慰安婦問題を始め、徴用工問題、竹島をめぐる問題、さらにはレーダー照射問題等、日韓間の問題には政治的問題が多いが、現在の「反韓」は政治レベルにとどまらず、一般大衆にまで深く根付いているともいわれる。
2000年代初頭には韓流ブーム等もあったが、その後も両国間の政治的問題が生起する度、日韓の文化交流にも影響が出て、その結果、民間交流のレベルでまで関係が悪化してしまうというパターンを繰り返したという印象も受ける。
韓国では司法や朱子学の影響も
ではなぜ、日韓関係が悪化してしまっているのだろうか。
日本においては、韓国が世界中で反日活動を行なっていることが、国際社会で日本が悪者扱いされ損害を被る原因であると捉えられる。韓国がことさらに反日を叫ぶのであるから、日本人の反韓感情が刺激されるのは当然であるともいえる。また、日韓間の政治的問題は「繰り返し」生起することも、日本人が韓国の反日的言動に対して「いい加減にしてほしい」と感じる原因の一つであろう。
一方の韓国では、今日でも、とりわけ歴史問題で日本に対する被害者意識が強いといわれる。そして、韓国は司法・立法・行政のバランスが取れておらず、司法の独立をことさら強調し行政への配慮がないことが、かつて日韓の間で結ばれた合意等が無効化する等の状況が生起している原因の一つと考えられる。たとえば、2011年8月に韓国憲法裁判所が、「日本軍の慰安婦被害者の賠償請求権に関して、韓国政府が具体的解決のために努力していないことは違憲行為である」との判決を出したことや、2015年12月の日韓合意に基づき設立された財団の解散問題、2018年の徴用工訴訟の最高裁判所の判決等が当てはまる。
しかし、日韓の歴史問題に韓国司法が介入するのには、韓国特有の理由もある。遅れてきた「司法の民主化」が、韓国司法に、ことさらに「司法の独立」を主張するマインドを生じさせているといわれる。1965年の日韓条約という外交的処理についても、今さらながら、韓国司法が「法的に解決できた訳ではない」と介入してきたのだ。
もう一つ、韓国司法の背中を押すものが、朱子学の影響が強い韓国国内世論である。朱子学では、「常に誤りを正し正義を追求することが正しい」とされ、「約束」よりも「正義」が尊重される。朱子学は、「厳密な真実」よりも「誇らしい過去」を強調する韓国のメディア・ナショナリズムにも影響を与えている可能性もある。日本は韓国との外交的処理を過大評価しているのかも知れない。
こうした背景もあり、韓国人には、「反日であるべき」や「日本を許してはならない」という考え方が根強いともいわれる。そのため、韓国メディアや政治家も過度に「反日」を叫ぶ。つまり、韓国にとって、自分たちのアイデンティティー確認の材料の一つが、反日ということなのかもしれない。