Washington Files

2019年9月9日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

残された道は「対潜水艦作戦」能力強化

 前述した通り、従来の「ミサイル防衛」システムが機能しないとなると、残された道は「対潜水艦作戦anti-submarine warfare」(ASW)能力強化しかない。すなわち、洋上艦、潜水艦、および「P3C」対潜哨戒機などを動員して対象国の潜水艦の動きを常時監視、必要に応じて追尾し、場合によっては攻撃するする防衛体制の確立だ。

 とくに今後、日本海および北西太平洋海域に展開が予想される北朝鮮の潜水艦は、日本そして韓国にとっても無視できない存在となる。これまで以上の監視体制強化が必要だ。

 ところが、今やアメリカ以上のASW能力を持つともいわれるわが国海上自衛隊とは異なり、韓国海軍の対潜能力はけっして十分なものではない。

 たとえば、海上自衛隊の場合、潜水艦は「おやしお級」「そうりゅう級」など3000排水トン以上の近代艦合わせ23隻、PSC対潜哨戒機100機近く保有し、日本周辺の各国の潜水艦の動きを常時監視している。これに対し、韓国は昨年就航した3000トン級1隻以外は小型の潜水艦が主力で、P3Cは16機しかなく、自国の沿岸海底パトロールがやっとの状態だ。

 韓国は今後定期的に北朝鮮潜水艦による公海での活動を監視していくには、海上自衛隊からの情報提供に期待せざるを得ない。

 しかし皮肉なことに、このような日韓両国間の防衛協力強化がまさに求められる大切な時期に引き起こされたのが、韓国・文在寅政権による「GSOMIA」(軍事情報包括保護協定)破棄通告だった。

 このままでは、韓国は北朝鮮による地上配備核ミサイルの脅威に加え、新たに「海中からの威嚇」にさらされ続けることになる。

 「GSOMIA」は日本にとってより、明らかに韓国にとってより重要な協定だ。

 韓国の国家安全保障を一手に担う文大統領は一体、何を考えているのか、まったく理解しがたいと言わざるを得ない。

  
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