世界の記述

2019年9月27日

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 ドイツのザクセンとブランデンブルク両州で9月1日、州議会選挙が行われ、急進右派「ドイツのための選択肢(AfD)」が得票率を大幅に伸ばした。反移民や自国通貨再導入を掲げる同党の躍進は、戦後以来、表面化しなかった民族主義の再来をもたらしている。

Uniyok/Alen-D/iStock / Getty Images Plus

 ザクセン州では、AfDが4年前に行われた州議会選の3倍に近い、27・5%の得票率を獲得。メルケル首相の与党キリスト教民主同盟(CDU)に次ぐ第2党に躍進した。ブランデンブルク州では、AfDが4年前の約2倍となる23・5%の得票率で、第1党社会民主党(SPD)の26・2%に肉薄した。

 旧東ドイツにあたる両州では、失業率が高く、移民への反感が根強い。2013年に結党したAfDは、同年の連邦議会選では得票率が5%に届かず議席は得られなかったが、初参加で4・7%の得票率で脚光を浴びた。15年には、100万人を超える難民がドイツに押し寄せ、庇護を貫いたメルケル首相に対し、AfDは排外主義を訴え、追い風となった。

 現在、連邦議会(下院)には、AfDが709議席中94議席を占め、欧州議会にもドイツ代表議員96人のうち11人を輩出する。

 10月に州議会選を控えるテューリンゲン州のAfD党首、ビョルン・ヘッケ氏は17年、ベルリンに建てられたホロコースト慰霊碑について、「ドイツ人は、首都中心に恥のモニュメントを建てる唯一の国民である」と演説。国内外から「危険人物」と非難された。

 国民国家を主張し、欧州連合(EU)離脱も視野に入れるAfDだが、支持者らは「ギリシャなど南欧諸国への財政支援で、ドイツが破綻する」という不満を持ち、ザクセン州の支持者たちは「難民や移民に仕事が奪われる」と危機感を抱いている。

 ドイツのベルテルスマン財団によると、同国の労働力を維持するためには、毎年、26万人の移民が60年まで必要だという。メルケル首相が当時、難民を受け入れた理由はここにもあった。

 旧東ドイツで暮らす人々の多くは、経済の安定や成長を優先することよりも、彼らの伝統や価値観にしがみつく。国内の既成政党政治やEUの国内干渉にも疲弊を募らせている。

 ベルリンの壁崩壊から11月9日で30年になる。AfDによる民族主義政策は、今後も地方都市を中心に勢いを増し、東と西に新たなる「見えない壁」を構築していくに違いない。

  
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