世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年9月24日

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 昨年6月12日のシンガポールでの歴史的米朝首脳会談から1年も経たない、今年5月、北朝鮮は、ミサイル発射実験を再開した。北朝鮮によるミサイルの発射は、7月と8月にも行われ、今年に入り合計8回、少なくとも18発のミサイルが発射された。

 これに対し、トランプ大統領は、シンガポール、ハノイ、板門店と3度にわたる金正恩委員長との会談の成果を誇示したいため、「短距離ミサイルの発射であり、問題視しない」と言う。

Roman Tiraspolsky/estherpoon/iStock Editorial / Getty Images Plus

 しかし、米国の専門家も含め、国際社会からは、これら度重なる北朝鮮のミサイル発射実験は、幾つかの点で大いに問題である、と指摘されている。

 1つには、これらのミサイル実験を通して、北朝鮮は、ミサイルの性能を向上させている点である。北朝鮮のミサイル技術の進展は、極めて懸念される。最新型のミサイルは、ロシアのイスカンデルに酷似していると専門家から指摘されている。だとすると、ロシアとも協議する必要があるのではないか。この型のミサイルは、低空飛行をし、予測不可能な軌道を飛行するので、パトリオットやイージスのミサイル防衛を突破する能力があるとされる。それゆえ、一層、問題は深刻である。これらミサイルの分析と、新たな対応が必要になろう。 

 2つ目は、ミサイルの発射方法である。ミサイルは、迅速に移動することが出来るローンチャーから発射された模様である。この可動式の方法を使用すれば、ミサイルを隠しておいて、短時間で展開、発射できる。相手は、対応準備が間に合わなくなってしまう可能性がある。

 3つ目は、同時ないし連続発射の向上である。旧式では8発同時ないし連続の発射が可能だとされたが、今回、さらにそれが向上したのではないかと専門家は分析する。特に、8月24日に発射されたミサイルは、「超大型」と言われ、短距離ミサイルとしても射程が長くなっているし、そこで採用された技術が、遅かれ早かれ、長距離ミサイルにも採用される可能性は十分にある。

 そういう意味では、ミサイル実験は短距離ミサイルであろうと、懸念されるべきものである。ICBM(大陸間弾道ミサイル)や核開発の実験がなければ脅威が軽減されるというものではない。また、短距離ミサイルの技術が向上されるということは、その射程内に入る韓国、日本、そして在韓、在日の米軍や朝鮮国連軍への脅威が高まるということでもある。

 従って、短距離ミサイルの発射を問題視しないトランプ大統領の姿勢は問題である。G7等でも、安倍総理が、全て国連安保理決議に違反していると述べたことは正しく、必要なことである。また、8月1日と27日、国連安保理は、英独仏3か国の要請で、北朝鮮の問題につき会合を開催し、8月27日には、英独仏でミサイル発射を安保理決議違反として非難する共同声明を発表した。東アジアから遠い欧州諸国が、北朝鮮の脅威を共有してくれていることは有難い。今後も、欧州諸国と一層連携していく必要があろう。これから米大統領選挙戦が本格化するが、民主党候補者からもきちっとした対北朝鮮政策を期待したい。 

 現在の米朝交渉の膠着を懸念する。6月末の米朝首脳板門店会見で、北朝鮮は、事務レベルの協議開催に同意したが、その後ほとんど動いていない。首脳間の信頼関係は重要であるが、トランプ大統領の外交が、金正恩委員長に間違ったシグナルを与えている。第1に、米政府高官に役割を渡さないことによって、トランプ大統領と話さないと問題が解決しないとの認識を与えてしまっている。第2に、ICBM、核兵器開発の実験をしなければ、トランプ大統領は、北朝鮮の核保有を吞むだろうと思わせてしまっている。トランプは、(1)金正恩に対する宥和的な言辞を改め、もう少し金正恩を揺さぶるべきではないか、(2)また中・長距離などの区別を止め、短距離ミサイルも国連安保理決議違反であるとの立場を明確にすべきだ。 

 トランプ外交がイラン等に戦線を拡大し、北朝鮮の核問題の重要性が相対的に低下しているように見えることも問題だ。制裁順守等を強化し、対中、対ロ連携も模索すべきだろう。

  
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