2024年12月15日(日)

中東を読み解く

2019年9月19日

強いメッセージを込めた攻撃

 トランプ大統領は当初の「(イランに)臨戦態勢を取る」という強硬姿勢を「戦争はしたくない」と後退させた。しかし、イランの最高指導者ハメネイ師は17日「敵対する米国と交渉することはない」と対米交渉を明確に拒否、両国関係は対話ムードを壊したい勢力の思惑通りの展開になっている。

 しかも、米紙によると、イラン政府はこのほど、イランにおける米国の権益を代表するテヘランのスイス大使館を通じ「イランが攻撃を受ければ、攻撃源にとどまらず、迅速かつ強力に反撃する」と警告した。これは米国がイランを攻撃した場合、米同盟国であるサウジアラビアなどに対しても報復すると警告したものである。場合によっては、ペルシャ湾が炎に包まれる悪夢もあり得るということだ。

 ポンペオ国務長官は18日、ムハンマド・サウジ皇太子と会談するためジッダ到着後、あらためて攻撃がイランの仕業であり、「戦争行為だ」と強い言葉で非難した。長官はサウジからアラブ首長国連邦(UAE)を訪問し、対イラン包囲網の引き締めを図る考えだ。

 だが、米国やサウジなど湾岸諸国は今回の攻撃で逆に、攻撃者の力をまざまざと見せつけられる形となった。戦争になれば、米軍の基地は無論、米艦船も相当の損害を受けるリスクを負わざるを得ない。攻撃者側は実際にそうした強いメッセージを送って見せたのだ。つまり、イランだけが敗者になることはない、ということだ。

 再選が最優先のトランプ大統領は損得勘定を敏感に計算していることだろう。米軍基地や艦船が直接的な攻撃を受けない限り、報復攻撃に出ることには消極的にならざるを得ない。選挙にとって得にならないからである。戦争を食い止めるのは、こうした損得の直感を習い性にしているトランプ氏にかかっていることだけは確かなようである。

  
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