2024年2月25日(日)

Washington Files

2019年10月7日

世論調査動向の推移

 下院本会議で弾劾が成立するには、過半数の218人の支持が必要だが、10月1日付けニューヨーク・タイムズ紙が報じた票読みによると、すでに民主党議員223人、無党派1人が支持表明している。不支持は共和党143人、民主党12人にとどまっており、現段階では「弾劾訴追」が成立する可能性がきわめて濃厚になりつつある。

 そしてその背景にあるのが、世論調査動向の推移だ。

 まず、CBSテレビが9月29日、公表した調査結果によると、民主党が弾劾審議に踏み切ったことについて、賛成55%、反対45%で、初めて支持は過半数を超えた。また前回選挙で民主党に投票した有権者を対象とした調査でも、支持が87%に達した。

 10月1日のキニピアック大学世論調査では、弾劾審議に対する支持が前回調査より増えて52%となり、初めて「不支持」(47%)を上回った。「大統領を罷免すべき」と回答した人も、1週間前の調査時から10%増え、47%となり、「罷免不支持」と同率となった。

 さらに、無党派層を対象とした調査でも、弾劾支持は増加傾向にあり、最新のCNNテレビ調査結果では、前回5月時より11%増の46%が弾劾審議に賛成している。

 こうした結果を踏まえ、弾劾審議開始を決断したペロシ下院議長は「国民のムードは前回(ロシア疑惑追及時)と比べ、劇的に変わった。合衆国憲法の精神に従って祈りと厳粛な気持ちで審議を進める」と語り、今後の追及に自信を表明した。

 このように国民の間で弾劾支持が広がる一方、共和党内部からは、そもそもゼレンスキー大統領との物騒な電話会話記録をトランプ大統領自身が公表に踏み切ったことが火に油を注ぐ結果を招いたとして、大統領の下した判断自体に対する疑問の声も出始めている。

 ワシントン・ポスト紙は9月25日、「某共和党上院議員」の言葉として「民主党が弾劾の動きを見せ始めた時に、大統領が問題の会話記録を公表したことは甚大な過ち a huge

mistake だった」との、ある共和党上院議員の言葉を引用、他の3人の同党議員も、今回の極秘文書公表が今後の大統領会話記録取り扱いの悪い前例となるばかりか、民主党側に妥協したという間違ったシグナルを送ったとして、深い懸念を抱いていると報じた。

 では大統領はなぜ、側近たちの反対をよそに公表したか―。この点も今、米マスコミの大きな関心事となりつつある。

 そのひとつの見方は、大統領は、モラー特別検査官によるロシア疑惑の徹底捜査の結果、訴追を逃れたことで自信を強め、今回のウクライナ疑惑問題でも“正面突破”で乗り切れるとの過信と誤った判断があったというものだ。

 さらに本来、ホワイトハウスの最高機密に属する文書をあえて公表することで、自らの身の潔白を国民に印象付ける一方、民主党の弾劾の動きについて、ロシア疑惑の時と同様、「魔女狩り」の烙印を押し、来年大統領選挙に向けてトランプ支持層拡大を狙った可能性も指摘されている。

 実際に、最新の各世論調査でも、弾劾に対する「不支持」は以前からあまり変わっていない。弾劾反対はキニピアック大学調査で47%、CBS、CNN調査でそれぞれ45%、ロイター通信調査で41%と、いずれも4割台を維持しており、国民の間で弾劾機運が高まる一方、依然としてトランプ支持も根強いことを裏付けている。 

 さらに、このまま弾劾審議が民主党の思惑通り順調に進み、かりに正式に下院で「弾劾訴追」が成立したとしても、最終的に共和党が多数を占める上院での審判で否定されることは確実なため、来年11月の大統領に向けて審理が長引けば長引くほど、大統領の下での

 結束の呼びかけが一段と盛り上がる可能性も否定できない。

 すでに「共和党再選委員会」は今回のウクライナ疑惑が浮上して以来、民主党攻撃の大々的なTVコマーシャル作戦に乗り出しており、最近までの過去1週間だけで、1000万ドル相当を注ぎ込んだと報道されている。

 こうしたことから、ペロシ下院議長ら民主党幹部は、トランプ大統領に対する白黒の決着をできるだけ早くつけたいとしており、そのためにも、関連委員会の委員を務める議員たちや議員スタッフたちに対しては、今月1日から14日までの本会議休会期間中も選挙区に帰らずできるだけワシントンにとどまり、弾劾本格審議の準備に専念するよう指示を出している。

 もし、こうした風雲急を告げる弾劾の動きが途中で挫折した場合、最悪の場合、来年選挙でトランプ大統領の再選のみならず、下院も共和党に奪還を許す最悪事態となりうる。民主党としては、ここ一番の大きな賭けに出たことは間違いない。

  
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