世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年11月7日

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 現在、トランプ大統領には、政敵である民主党のバイデン元副大統領のあら捜しをウクライナの大統領に要請し、政治の規範と倫理を犯したとされる「ウクライナ疑惑」が掛けられている。この問題は米国の下院の委員会で議論されており、トランプ大統領の弾劾訴追が米国内の主要議題となっている。下院で過半数を占める民主党が主導している中、共和党の議員たちは、これに反対し、下院の審議が麻痺することも屡(しば)である。

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 また、トランプ大統領は最近、従来の政策を突如覆し、トルコがシリア北東部に軍事侵攻してクルド人勢力を駆逐することをトルコのエルドアン大統領に容認した。この件に対しても非難が起こっており、先例のない失態だったと、与野党問わず言われている。

 10月17日付のニューヨーク・タイムズ紙で、同紙コラムニストのデイヴィッド・ブルークス氏は、『トランプ自身が米国にとっての脅威だとして、トランプに大統領を2期やらせてはいけない』と主張している。そこまでの強い口調ではなくても、米国内でトランプ氏の大統領としての資質に疑問を持つ人が、少なからず増えてきているようである。

 果たして、来年の米国大統領選挙の行方はどうなるのだろうか。時期尚早かもしれないが、米国内では来年初めから始まる予備選挙に向けて、既に様々な憶測が飛びかっている。民主党の大統領候補としては、ジョー・バイデン前副大統領の他、バーニー・サンダース上院議員(バーモント州)とエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチュ―セッツ州)が有力視されている。

 民主党にとっては、バイデンのような穏健派を候補に擁立して、2016年にトランプに奪われたウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニアの各州の奪還を目指すことが、最も理にかなった選挙戦略だという有力な意見がある。しかし、民主党内の予備選挙は、そうスムーズには進行しない。多数の立候補者が出る民主党の中で、当初は先頭を独走していたバイデン氏であるが、このところ、左派の進歩派ウォーレン氏やサンダース氏が並走するようになり、世論調査によってはウォーレン氏が先頭を行くこともある。そのせいか、10月16日の4回目のテレビ討論では、ウォーレン氏が他の候補者たちの標的にされた。 

 未だ、ウォーレン氏が大統領になることは想像し難い。また、そのことは、甚だしく心配でもある。ウォーレン氏の貿易政策は保護主義だと言われる。彼女は、米国の価値や米国の政策目標――気候変動との戦い、基本的な労働条件の尊重、脱税の取締り――の充足という前提条件が充たされない限り、新たな貿易協定は結ばない、TPP(環太平洋パートナーシップ) には強く反対と述べている。この種の教条主義的な信念を前面に出されると取り付く島もない。 

 ウォーレン氏は、10月16日のテレビ討論で「我々は中東から脱出すべきである。中東に兵を置くべきではない」「この地域に軍事的解決はない」と述べた。こういう短絡的な答えしか出来ないのでは落第である。彼女のヘマに気付いた彼女の陣営は、彼女が「兵」と言ったのは「戦闘部隊」のことであるなどと説明を試みたが、彼女が現状を理解し、現状に立脚して政策を語っているようには思われない。カタールの米軍基地を拠点に米軍が行っているのは戦闘作戦である。シリアの部隊はイラクの米軍基地に撤収を始めているが、イラクの駐留はどうするのか。アフガニスタンはどうするのか。彼女には外交と軍事力との関係も理解が希薄のように思われる。 

 ウォーレン氏は、これまで対外政策を殆ど語っていない。今後、予備選挙がどう展開するか判らないが、指名獲得を狙うのであれば、対外政策に関するブレーンを整え、真剣に勉強する必要があろう。そうでなければ、大統領の道は遠いだろう。

  
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