インド経済を読む

2019年11月15日

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野瀬大樹 (のせ・ひろき)

公認会計士・税理士

大手監査法人にて、株式公開支援業務・法定監査業務・内部統制構築業務などに関わったのちに独立し、野瀬公認会計士事務所を設立。インドのニューデリーに、日本企業のインド進出を支援するNAC Nose India Pvt. Ltd.を設立し、代表に就任。日本インドの双方より、日系企業へのコンサルティング業務を行っている。近著に『お金儲けは「インド式」に学べ!』(ビジネス社)がある。

[著書]

変わってきたインド人の意識と、それでも変わらぬインド人の意識

 大気汚染の健康への害が認知されてきたからか、上記のナンバー規制に対して、周囲のインド人から不満の声はほとんど聞こえてこない。不便を受けいれてもこの状況をなんとか改善しなければという以前とは違う都市部におけるインド人の環境意識の高まりを感じる。

 しかし一方で、この環境意識を高めるという点についてはより一層の改善の余地というものも残っている。

 例えばディワリの花火。

 ディワリの花火が大気汚染の大きな原因になることは政府も十二分に理解しているので、毎年花火に関する規制を政府は発表している。

 今年は、花火の販売を規制し、当局が定めた条件(煙の量など)をクリアしたものだけを販売するようにしたのだが、年に1度の祭りで盛り上がっている町の人達がそんな上品な花火を買うわけもなく、結局は例年通り中国製の違法な安い花火を皆購入したと言われている。またその花火を使用する時間帯も規制があったのだが、警察も町全体を取り締まるわけにもいかず徹底されていたとは言い難いのが実際のところだ。

 そしてより一層の意識改革が問われるのが農家の「野焼き」だ。こちらについても政府は大気汚染の原因になるからと抑制を呼び掛けているが、実効性のある罰則もないためほとんど効果がないと言われている。

 農業国であるインドにおいて、農家は非常に重要な「票田」であり、農家の人達の機嫌を損ねる政策や規制を推進しにくいという事情があり、政府も腫れものに触るように農家には接しているように見える。

 以前から何度もこのコラムでお伝えしてきている「世界最大の民主主義国家ゆえの苦悩」、つまり「正解は分かっているのにその方策が実行できない」というジレンマがこの大気汚染問題についても影を落としているのだ。

 この問題については、歴代世間に比べて支持率が高いと言われるモディ政権が批判を覚悟で決断をするか、あとは地道に農家含むインド人全般に啓蒙活動を行うかしかない。しかし経済成長と環境問題のぶつかり合いは日本も40~50年前に直面してきた問題であり、経済発展するための「成長痛」とも言える。

 この問題を乗り越えたところに「経済大国インド」は存在することは間違いないので、政府の積極的対応が求められる。

  
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