世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年12月26日

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 このところ、ラテンアメリカ諸国で反政府デモが頻発している。エクアドル、チリ、コロンビアなどである。こうした反政府デモの頻発は何を意味するのであろうか。ボリビアのモラレス前大統領(社会主義者)の失脚、ウルグアイでの中道左派から右派への政権交代に鑑みれば、2015年以来右に大きく触れた振り子が左に戻っているということでもない。

(romeocane1/iStock / Getty Images Plus)

 最近のメキシコ、ブラジル、エルサルバドル、アルゼンチン、ボリビア、ウルグアイの大統領選挙に共通することは、現職あるいはその後継候補の敗退である。その原因は、貧富の格差や汚職、治安悪化等に対し現政権の取り組みが成果を上げておらず、国民の不満が政権側に向けられた結果である。

 さらにその背景には、ラテンアメリカ諸国の構造的な経済的停滞と、最近における中国経済の減速による一次産品価格の低下、通貨安といった問題がある。

 チリやコロンビアの抗議活動は、計画性がなく明確な指導者もいない自然発生的なもので、フランスの黄色いベスト運動を連想させ、SNSの役割なども影響していると思われる。

 ラテンアメリカ諸国での街頭デモ等の背景や原因は、国ごとに異なるが、共通しているのは、政権側が大衆の要求に妥協する傾向があるという点である。しかし、ポピュリスト的政策により国民の不満をそらすことはできても、根本的な解決にはならないであろう。

 例えば、メキシコでは、種々疑問ある政策もあり、治安状況の悪化、経済マイナス成長、身内に甘い汚職取り締まりなどのネガティブな結果にもかかわらず、大統領の支持率は依然として60%である。これは大統領本人が汚職と無縁であることと徹底した低所得層や先住民向けのパフォーマンスによるもので、いずれ反動を招くことになろう。

 他方、プラス成長が見込まれているブラジルについては、大衆迎合的政策に流れることなく、更なる改革に取り組むことにより外国投資の活性化も期待される。EUとのFTAにより南米経済のけん引役に復帰する可能性もないわけではい。そうなれば、南米全体の政治的経済的安定にも良い影響をもたらすものと思われる。

 このような状況の中で、ラテンアメリカ諸国の国内での分断が進むとともに、国際的には、ブラジル等右派諸国とアルゼンチン、メキシコの左派、キューバ、ベネズエラ、ニカラグア独裁政権の間の分断・対立が深まるであろう。その中で、1月のペルーの議会選挙の帰趨、ボリビアの大統領再選挙で反モラレス派が勝利するか、年金改革が一段落したブラジルが行政・税制改革や民営化等次のステップに進めるのか、メルコスール(Mercosur:南米南部共同市場)とEUのFTAの帰趨等の問題は将来に向けての正念場と言える。

 

  
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