2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2020年1月13日

横綱を果たすホープ力士が育ってこない

 少々話が脱線したので元に戻そう。昨今、取り口や立ち居振る舞いなど「横綱の品格」をもとに異常なまでに批判されがちな白鵬バッシングは、本来ならば一番目を向けなければいけない問題点を見落としてしまう危険性をはらんでいる。打倒・白鵬を成し遂げなければいけない新時代の旗手たちが成熟の時を迎えることができていない点だ。

 今場所で言えば大関貴景勝や新関脇となった朝乃山には、その期待が大きい。しかし現状で白鵬の存在を脅かすような存在になっているかと尋ねられれば、それは愚問と断じざるを得ないだろう。残念なことに、まだまだ白鵬とは差があり過ぎるのである。こう指摘すると反白鵬の人たちは地団駄を踏むだろうが、それはこれまでの結果が証明している。

 大相撲の将来を憂えるならば、次代を担う若手力士の台頭とともに日本人横綱の生誕を周りが猛プッシュしなければいけない。白鵬が「横綱らしい取り口じゃないから汚い」とか「何となく品格がない」とか曖昧なところを突いて粗探しをするヒマがあったら、もっと広い視野を持って〝憎っくきヒール横綱〟に手も足も出せない脆弱な相手力士たちにこそ鋭い舌鋒を向けるべきだろう。そうしないのは、何だか〝弱い者同士の慣れ合い〟みたいで物悲しく映る。

 初日のNHK・大相撲中継で正面の解説を務めた元横綱の北の富士氏は白鵬が「四股」や「すり足」、「鉄砲」、「股割り」の基本練習を未だ怠らず非常に長い時間をかけながら日々のルーチンワークにしている点を珍しく褒めていた。どちらかといえば、いつもの同氏は白鵬の取り口や姿勢に厳しい意見をぶっ放す人物として有名だ。ところが、この日は張り差しから完勝した白鵬の取り口に終始文句を言うことなく「厳しい攻めだったね」と称賛。そして大横綱になっても基本練習を黙々とこなす白鵬の陰の努力を引き合いに出しながら放送中に「若手力士はあれを見て何も感じないのかね」ともつぶやいていた。

 そう、これが「答え」なのだ。打倒・無双横綱を果たすホープ力士が育ってこない――。今の白鵬バッシング狂騒曲は、そんな危機的状況から目を背けるスケープゴートになってしまっているのである。貴景勝、あるいは朝乃山でもいい。白鵬への批判を〝隠れ蓑〟にせず、一刻も早く無双横綱に引導を渡すような無類の強さを土俵上で見せてほしいと切に願う。

  
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