また、元同州知事で民主党全国委委員長を務めた事情通のテリー・マコーリフ氏も同紙とのインタビューで以下のように語った:
「今回記録的投票率となったのは、州全体で民主党員のみならず穏健派の共和党員の中でもトランプ大統領に対する根深い嫌悪感deep disgust with Trump presidencyが存在しているからだ。自分が知っている穏健派共和党員の多くは『われわれはトランプに投票するわけにはいかない。替わる候補を示してほしい』とさえ言ってきた。それがバイデン候補だった。その意味でわれわれは、ドナルド・トランプに大いに感謝しなければならない。彼はバージニア民主党の唯一最大の貢献者となった」
両紙(誌)記事に共通するのは、もしトランプ大統領が11月の本選で再選されることになった場合、2期目のトランプ政権が内政、外交両面において一層独裁・専制的な体質を強めることに対する恐怖・警戒感が広く共有されているという指摘だ。
すでにトランプ大統領は先月初め、ウクライナ疑惑をめぐる弾劾裁判を上院の「無罪評決」で乗り切って以来、自らの手腕に自信を強め、その後の政策推進においても、独断専行がめだちつつある。「無罪評決」直後から始まった、ウクライナ疑惑解明に協力した国務、国防両省、CIA、DIA(国防情報局)、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)担当者らに対する解任、配転などの厳罰処置、同疑惑を追及してきたワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズ紙など有力紙に対する報復訴訟、公約に掲げてきたメキシコ国境沿いの「壁建設」資金調達のため議会の意思を無視した独断的国防予算の転用など、その例は枚挙にいとまがない。
トランプ政権に対する「根深い嫌悪感」
この点、民主党内のみならず、共和党内部にもトランプ政権に対する「根深い嫌悪感」がかなり存在する、とのマコーリフ元州知事のコメントは注目に値する。
さらに民主党主流派が大統領選候補者選びでとくに危惧するのは、急進左派のサンダース氏が最終的に指名獲得となった場合、大統領選でトランプ再選を許すのみか、下院の議会選挙でも敗退し、その結果、上下両院とも共和党に多数支配を許す事態を招くことだ。そして将来の最高裁判事人事、重要閣僚・高官任命、内政・外交予算案決定などもトランプ氏の独裁的手法が“トランプ議会”を追い風に無制限にまかり通る、最悪のシナリオが浮上してくることになる。
今回のスーパー・チューズデーが、バイデン候補自身にとっても“青天の霹靂”のような願ってもない結果となった背景には、直前になってトランプ大統領に対するこうした深刻な不安と危機感が予想以上の多くの有権者に共有された結果だろう。
ただ、まだ今後も多くの代議員を擁する重要州での予備選を控え、サンダース陣営も選挙態勢を立て直し、巻き返しを狙っていると伝えられるだけに、民主党候補確定に至るまでにはなお予断を許さない状況が続くことになりそうだ。
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