2024年12月23日(月)

Wedge REPORT

2020年4月11日

(BogdanVj/gettyimages)

 新型コロナウイルスの感染拡大で小売業界の売り方が変わり始めている。その代表例がネットスーパーだろう。ネットスーパーは混み合う小売り店頭に出向かなくても済み、まさにコロナ対策。ネットスーパーを展開している企業は緊急事態宣言の発出で需要が急増。当日配送や翌日配送をできないネットスーパーも出ている。ネットスーパーで一体どんな商品が売れているのか。そして日本でもネットスーパーの時代が到来するのか――。

 この新型コロナの感染が拡大で、全国的な小中高校の休校や、東京都で感染者が1000人を超えたなどと「新型コロナの感染拡大」のニュースが流れるたびに、需要が拡大しているのが生協の宅配や大手スーパーが展開するネットスーパーの宅配だ。

 「(3月に入ってから)需要の山はありますが、一貫して宅配は伸びています」と話すのはコープデリ生活協同組合連合会(コープデリ連合会)だ。

 コープネットの宅配需要は急増している。3月は前年の同じ時期に比べ20%増となった。「まとめて購入するというケースが増えている」(コープデリ連合会)といい、買い上げ単価、買い上げ点数とも伸びている。

 「保存の効く商品の伸びがいいです。コメや冷凍食品。そして飲料水や紙製品など重くて嵩張る商品に需要があります」(同)という。

 ライフコーポレーションでも「ネットスーパーの3月の売上高は前年同月比30%増の伸び」と話す。ライフでは冷凍食品や缶詰といった長期間保存できる商品の動きが良い」というが、小中高校の休校で子供が家にいるためだろうか、「菓子の注文も多い」という。

 変わったところでは「弁当や総菜も伸びている」(大手スーパー)という声もある。リモートワークが増えているためか、即座に食べられる商品が人気だ。弁当や総菜はコンビニや持ち帰り弁当チェーンのお株と思っていたら、ネットスーパーで食材などと一緒に買われているようだ。

 ネットスーパーというと商品を見たり手に取ったりして確認できないとか、宅配してもらう時間が制約されるなどといわれ、広がり方はスローで、小売業界でも儲からない事業に挙げられてきた。

 しかし店に行った方が早いと思っていた消費者が今回のコロナ騒動で「頼んでみると便利、商品もしっかりしたものが届く」(ライフコーポレーション)と「その利便性を再認識している」(同)という。

 多くのネットスーパーで需要が急増したためネットスーパーのサイトでは商品によって「欠品」「配送遅れ」「数量制限」という注意書きが並んでいる。

 ネットスーパーでは通常、混雑していない時は午前中に注文すると、その日のうちに届いたり、翌日配送したりしていたが、注文の急増で4、5日後になるケースもあるというから、なんとも複雑な表情だ。

 そればかりか、イトーヨーカ堂や西友、さらに東急ストアでは、あまりの受注が急速に増えたため注文がさばききれず、一時休止という事態も発生している。

 ネットスーパーは今回のコロナ禍で脚光を浴び、今後も市場を拡大していくのか。買い物のスタイルが変わっている消費者がネットスーパーを日々の購買行動に組み込むかどうかが流通業界の関心事だ。

 ある大手食品スーパーでは「ネットスーパーはなかなか儲からないのです。しかし、今は厳しくとも、絶対にネットスーパーの時代がくるとみています」という。

 確かにそうだ。スーパーの食品の平均粗利益率が20~30%といわれるなか、店頭で商品をピックアップしてそろえ、梱包して宅配する。人件費だけでも足が出そうであり、それほど採算が良いビジネスとはいえない。

 しかし、考えてみてほしい。我々は、これまで、当たり前のように店に買い物に行き、日常の商品という重い荷物を下げて帰宅するということを当たり前のようにやってきた。それは高齢者にとっては楽しみでもあった。


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