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2020年4月23日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

医療従事者への差別、偏見

 福井会長は新型コロナウイルス感染症の対応について「ウイルスによって引き起こされる疾病としての生物学的感染症、治療法が確立されていないことによる強い不安や怖れによる心理学的感染症、不安や恐怖が生み出す嫌悪、差別、偏見の社会学的感染症の3つの感染症を引き起こす」と指摘した。

 看護職自身に向けられた差別、偏見の事例としては、医療機関の看護職の子供が、保育園の登園の自粛を求められた、業務終了後にタクシーに乗車の際に看護職という理由で乗車を拒否された、馴染みの定食屋から看護職は来店しないでほしいと言われたことなどを挙げた。

 看護職の家族に向けられたものでは「感染症病床に勤務していることが夫の会社に知られ、夫が勤務先より休むように言われた。親が感染症を受け入れている医療機関に勤務していることを理由に、子供が学校でいじめにあった」などの事例を紹介。

 「風評被害、差別は公的財産である医療を支える看護職の損失になり、医療崩壊につながる恐れがある」と指摘した。現場で働いている看護職に対して国民に求めたいこととしては「特別な配慮は要らない。『有難う、お疲れ様』とひと事、言ってもらうだけで報われた気持ちになり、モチベーションが上がる。今までと同じような心の距離感で接してほしい」と述べた。

 こうした偏見をなくすために国民は何をすべきかについては「感染症について正しく理解して、その次に自分はどう行動すればよいかをそれぞれに問いかけてほしい。誰かの回答を待つのではなく、自分で判断してほしい。それが偏見をなくすことにつながるのではないか」と話した。

 足りない看護職の人材確保については、4月8日に離職中の看護師など潜在看護職に対して支援を要請、eナースセンターに求職登録している人などを対象に約5万人の看護職に復職の依頼メールを一斉送信した。その結果、4月20日現在で110人が就業してくれているという。内訳は新型コロナの相談対応コールセンターに47人、ホテルなど軽症者宿泊施設に30人など。

看護職の地位向上

 「医療関係に従事する人が約300万人、そのうち半数以上の166万人が看護職だ。感染症が広がったいまは看護職に対して『頑張ってください』と言われるが、いままでは、いてくれて当たり前の存在だった。看護職の置かれている価値、意義は高く位置付けられているのかを問いたい。コロナ禍が終わって、看護職の社会における価値を認識してもらえることを願っている」と述べ、看護職の果たしている社会的意義を強調した。

 また医師との関係について「看護職は医師の補助的役割と見られていることが多かったが、決してそうではない。感染症が広がった今は、最前線で自分の専門性を生かして働くことを位置付けられており、医師とは対等なウィン・ウィンの関係になっていることを理解してもらえば、看護職の希望も広がり未来もある」と指摘した。

福井トシ子 1956年生まれ。82年東京女子医科大学看護短期大学専攻科、83年福島県立総合衛生学院保健学科終了後、東京女子医科大学病院に勤務。91年杏林大学医学部付属病院師長。2003年同附属病院看護部長、10年日本看護協会常任理事を経て、17年6月から会長。福島県出身。

  
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