WEDGE REPORT

2020年4月24日

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原油価格下落が引き起こすものは再エネへの投資シフトか

 原油価格下落は消費国にはメリットをもたらすが、生産国には大きな打撃になる。米国石油協会によると、石油・天然ガス業界は米国国内総生産額の8%をたたき出し、1020万人の雇用を持つ。平均年収は10.2万ドル、全米平均5.5万ドルを大きく上回る。業界の設備投資額は、2012年から2016年の間年平均2270億ドル、25兆円にもなり、米国全産業の設備投資額の16%のシェアを持つ。

 原油価格の下落は業界に大きな影響を与えるが、連邦、州政府も大きな影響を受ける。多くの国では地下鉱物を採掘する権利は国が与えるが、米国と英国では地表権を持つ人が地下鉱物の所有権を持つ(英国では石炭、石油、ガス、金銀は例外)。米全土の27.4%を占める連邦政府所有地あるいは大陸棚から石油を採掘する際には、生産企業は販売価格の12.5%あるいは18.5%のロイヤルティーを連邦政府に支払う必要がある。2018年の石油・天然ガスに係わる連邦政府の収入は84億ドル、9000億円を超えている。

 連邦政府のロイヤルティー収入の半分は、原則州政府に分けられ、州政府はこれ以外にも石油などの鉱物採掘に係わる収入をあげている。鉱物資源に依存する州政府は価格の下落が長引けば大きな歳入減に直面する。たとえば予算規模約50億ドルのワイオミング州では原油価格1ドルの下落は1250万ドルの州歳入減になると州上院議員は指摘している。

 減収の結果、経済回復への資金にも窮する州政府が炭素税などの新税を、コロナ感染が落ち着いた後導入することを検討するかもしれない。原油価格上昇時であれば、フランスの黄色ベスト騒動(『ドイツ政府もフランス国民も「温暖化対策より経済」』)の二の舞だが原油価格が低迷している局面では新税導入は比較的容易だ。温暖化対策に熱心な国、地方政府が検討することがあり得るだろう。

 原油価格下落は石油会社にも大きな影響を与えた。エクソン・モービルは2020年のシェール、大陸棚原油開発などへの資本支出を100億ドル削減し、230億ドルに設定するなど、大手石油会社は軒並み大きな投資削減を発表した。感染拡大前、多くの国際石油企業は化石燃料部門から再生可能エネルギー、電気自動車インフラなどへ投資をシフトする意向を示していたが、投資額削減は再エネ投資にも影響を与えるかもしれない。しかし、その影響は原油への投資に比べると小さくなるだろう。

 原油供給量、価格は電力、再エネとの比較では大きく変動するので、投資リスクは相対的に高いと考えられ、リスクに見合ったより高い収益性が要求される。今後経済活動の復活に伴い原油需要も回復するだろうが、それにはかなり時間がかかる。原油価格はかなりの間低迷することになると思われ、良い投資対象にはならないだろう。一方、再エネは政府補助がなければ、高い収益率を望めないが、原油との比較ではリスクは小さい。ローリスク、ミディアムリターンの投資対象として資金がシフトする可能性はかなりあるのではないだろうか。

  
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