田部康喜のTV読本

2020年5月1日

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田部康喜 (たべ・こうき)

コラムニスト

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(Katerina Sisperova gettyimages)

 テレビ朝日「M 愛すべき人がいて」(毎週土曜午後23時15分)は、歌手・浜崎あゆみと、エイベックス代表取締役会長の松浦勝人による、スター誕生の物語である。原作は、ふたりに長時間のインタビューを敢行した、ノンフィクション作家の小松成美の同名のノンフィクション小説(2019年、幻冬舎)である。

 このノンフィクション小説の最後に、浜崎は次のような言葉を寄せている。

 誰かに「今回の人生で一生に一度きりだと思えるほどの大恋愛をしましたか?」と問われたなら私は何の迷いもなくこう答えるだろう。

 「はい。自分の身を滅ぼすほど、ひとりの男性を愛しました。」と。

 今回のドラマは、原作の美しい愛の物語を下敷きにしながらも、浜崎あゆみを「アユ」(安斉かれん)と、松浦勝人を「マサ」(三浦翔平)と仮名にすることによって、ふたりにからむ芸能界の人々の嫉妬の暗闇が、ふたりの愛をいっそう際立際立たせる。

 福岡でモデルをやっていた、高校生のアユ(安斉)は母子家庭で育ち、家庭を助けるために祖母・幸子(市毛良枝)とともに上京して、芸能界でチャンスをつかもうとする。モデルやドラマの端役まではできるようになったが、前途に光は見えてこない。

 第1話「俺の作った虹を渡れ!」(4月18日)は、アユが友人に誘われた、六本木のディスコ・ベルファインのVIPルームで、レコード会社「A VICTORY」の専務でプロデューサーのマサと出会う。毎夜のようにベルファインをマサが訪れていたのは、スターの原石を探すのが目的だった。

 マサと知り合いになって、芸能界デビューを狙うVIPルームのなかの若い女性たちの中から、アユとだけ携帯電話番号の交換をする。マサの行きつけのバーに呼び出された、アユは知っている曲を次々に歌わされる。モデルや女優業のアユは歌には自信がまったくない。ところが、マサは「いい声をしている。俺の会社で歌手になれ」という。まさかの言葉に驚くアユに、「俺を信じろ」とマサはいう。

 アユが「A VICTORY」で歌手として出発するには、所属している大手の「中谷プロ」の承諾を得たうえで移籍する、難関が待ち受けていた。

 第2話「いいダイヤの原石だ」(4月25日)は、中谷プロの社長・中谷(高橋克典)と、マサの対決シーンから始まる。

 中谷 アユは磨けばいい女優になる。

 マサ 俺が磨いたときだけ輝く。

 中谷 誰がお前を選んだ?

 マサ 俺を選んだのは神様です。

 中谷 ひと昔前なら、君のような奴がたくさんいた。

    わかった。アユを渡すよ。

    アユが本物のスターになれば、君の勝ちだ。

 アユの移籍問題が解決すると、マサはアユをスーパーカーに乗せて、生まれ育った横浜の夜の海岸に連れていく。

 マサ ダイヤの原石がダイヤになるかどうかは、アユしだいだ。

 アユ アユは本当にダイヤの原石でしょうか?

 マサ 自分がダイヤの原石だと思えば、その時点でダイヤの原石だ。

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