2024年4月20日(土)

食の安全 常識・非常識

2020年5月25日

日本の医師は、栄養の専門家でない場合がほとんど

松永:医師による食事指南というのは、メディアでも書籍でも山ほどあります。多くの人が「専門家である医師が言っているから」と信用しています。

佐々木:専門家とはなにか、ということも考えなければいけませんね。一応ぼくも医師ですが、ぼくに手術は頼まないでください(笑)。内科系の研修しか受けていないのです。外科はほとんどできません。でも、本物の医師です。そして、それ以上に、栄養学者です。医師は、医学をまったく学んでいない一般の人よりは病気のことについては頼りになります。しかし、医師ごとに得意分野があります。特に、日本では医師教育のなかに栄養学はほとんど入っていません。予防栄養になると皆無に近い状態です。ですから、この役割を医師に求めるのはちょっとかわいそうです。

「発酵食品だからよい」は言い訳?

松永:“効くかも”候補のエース格である乳酸菌やビタミンDでも、解釈は難しいということは、先生のお話でよくわかりました。ならば、ちまたでよく言われている納豆やマヌカハニー、ニンニク等の食品は、先生からご覧になってどうですか? 味噌汁も「発酵食品だからよい」と言われています。発酵食品といっても千差万別なのに、ひとくくりにしてよいの悪いの、とあまりにも暴論ですが、それがまかり通っています。

世界保健機関(WHO)は「Myth busters」というページを特設し、誤情報を正そうとしている。これは、ニンニクでは予防できないことを伝える素材。だれでもダウンロードして使える 出典:WHO Myth busters

佐々木:人は自分が言ってもらいたいことばを探します。そして、他人が言ってくれたからそれは正しいと信じる傾向があります。「発酵食品だから」とだれかが言ってくれたから味噌汁を飲む「言い訳」ができるわけです。「免罪符」とも言いますね。血圧が高くて減塩が必要なのは知っていても、飲んでだいじょうぶ、と思える。自分ではなく他人が行ってくれた、つまり、お墨付きをもらったことに価値があるわけです。

松永:論文のデータベースを調べてみても、納豆やマヌカハニー、ニンニク等、話題の食品に、「人の感染症予防に効く」というようなエビデンスはほぼ、ありません。国立健康・栄養研究所が特設ページを作り、「現時点で、新型コロナウイルスに対する効果を示した食品・素材の情報は見当たりません。そこで、新型コロナウイルスと同じウイルス性感染症であるインフルエンザなどに対する研究結果について調べましたので紹介いたします」として解説しています。

 

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