食の安全 常識・非常識

2020年5月25日

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松永和紀 (まつなが・わき)

科学ジャーナリスト

1963年生まれ。89年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、フリーの科学ジャーナリストに。主な著書は『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』(家の光協会)、『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社)、『効かない健康食品 危ない天然・自然』(光文社新書)など。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(同)で科学ジャーナリスト賞受賞。2021年7月より内閣府食品安全委員会委員(非常勤、リスクコミュニケーション担当)。(記事の内容は、所属する組織の見解を示すものではなく、ジャーナリスト個人としての意見に基づきます)

日の光を浴びてビタミンDを作る

松永:ビタミンDは、骨の健康維持と密接な関係にあります。したがって、新型コロナウイルス感染症対策として特別なことをするのではなく、これまで通り、魚やきのこなどさまざまな食品を食べてビタミンDを取り、紫外線を浴びて体の中で作りなさい。そうすれば結果的に、新型コロナ対策にもなりますよ、ということでしょうか。

 ちょっと心配なのは、今、日を浴びる時間がほとんどの人で減っているだろう、ということ。緊急事態宣言後の外出自粛の要請に伴って、多くの人は外出しなくなりました。私自身も、日中に出歩くとどうしても人に接触する時間が増えそうなのでほとんど出ず、夜にウォーキングをして体調管理しているような状態です。ビタミンDが体の中で産生されにくいのでは、と心配になります。

佐々木:たしかにそうですね。日光(紫外線)曝露によって皮下で合成されるビタミンDは日を浴びている時間も関連するのですが、それ以上に日光の照射角度がたいせつです。当然、角度が高いほど照射量が多く、合成量が多いわけです。幸いなことに、これから夏至に向かい、照射角度はすでにかなり高くなっています。昼間(できれば正午前後)に日を浴びてもらいたいです。自宅の庭やベランダでじゅうぶんです。日当たりを探してください。東京付近で、12月なら半時間、7月ならわずか5分くらいでじゅうぶんらしいです。

松永:そういう話を聞くと安心します。日本人の食事摂取基準でも詳細に説明されていて、北緯の高い北海道の方々でも、適度に外で日を浴びていればだいじょうぶそうです。

皮膚面積 600 cm2 は体重 70 kg の者が通常の生活の中で日光曝露を受ける顔及び両手の甲の面積として設定された 出典:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書 p.171~p.208 写真を拡大

佐々木:紫外線は健康被害の原因にもなりますので、浴びすぎもよくないです。欧米諸国よりも全体として緯度が低く、紫外線量の多い日本ですから、「ビタミンDが足りない→(即)サプリメント」と考えずに、ちょうどよいバランス、つまり、どれくらいの時間、日に浴びるのが最適なのかを探し、紫外線をじょうずに利用したいものです。

松永:ちなみに、「日本人の食事摂取基準2020年版」では、ビタミンDが不足すると骨折リスクが上昇することなどが書かれていますが、免疫系への影響は一言も記述されていません。これは、どうしてですか?

佐々木:食事摂取基準は「1日当たり何g」とか「何mg」というように具体的な摂取量を示さなくてはなりません。「栄養素〇〇は健康状態××を健全に保つ機能が報告されています。」というような定性的な文章は認められません。ひとつは「報告されています」ではなく、「研究が相当数あってほぼ一致した結果が得られている」でなくてはならないから、もうひとつは、具体的に「何mg取れば健全に保つ」のかを明記しなくてはならないからです。この2つの点を満たす研究が免疫系にはまだ存在しないということだと理解しています。

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