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2020年6月1日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

米国と台湾が関係強化

Q 台湾の半導体製造大手のTSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング)が米国に工場を作ることを発表するなど、米国と台湾の関係が強化されてきているが。

杉山ディレクター TSMCの米国企業向け売上げは、全体の60%であり、米国進出は、ビジネス的なことを考えれば当然である。一方、中国ファーウェイ向け売上は、10%程である。これまで、TSMCで生産されていたファーウェイ向け半導体は、輸出できていたが、その半導体は米国のアプライドマテリアルなどの製造装置を使っており、今回の規制強化で輸出できなくなり、ファーウェイは半導体の供給を受けられなくなるだろう。特に最先端の半導体は厳しくなる。

 中国の半導体メーカーは自前で半導体の生産をすることを目指してはいるが、すぐにはできないだろう。中国国内最大の半導体製造大手SMIC(中芯国際集成電路製造)での内製化を推進しており、ファーウェイが今年発売するミドルレンジ版スマホ向けの動作に必要な機能のすべてを一つの半導体チップ上に実装したSoCのKirin710Aは、SMICの14nm(ナノメートル)で生産開始。ファーウェイが中国国内のファウンダリで製品化した初めての製品である。ただし、TSMCに比べると世代も古く、製造装置も米国製を使用しており規制対象となる可能性がある。TSMCが米国工場を作ることを決めたのは、米中の半導体摩擦が激化することを見越したものであるとみている。

 米国は国家安全保障戦略から17年に中国を脅威国と位置付けており、かつてのCOCOM(対共産圏輸出統制)のような制度を再検討して、中国を孤立させる行動を取る可能性があるとみている。

Q 米国からの制裁が厳しくなることで、中国は半導体設計者、製造プロセスエンジニアの人材確保に向けた動きが盛んになっているようだが。

杉山ディレクター 実際に日本市場にいるメモリ関連エンジニア、CMOSイメージセンサー関連エンジニアが中国企業にヘッドハントされている。元エルピーダ社の社長だった坂本幸雄さんが紫光集団関連の設計会社のオフィスを日本(川崎)に昨年末オープンしている。米国規制によって、日本で設計してTSMCで生産という狙いもあったのかもしれないが、先日の米国の規制強化でそれは厳しそうだ。

  
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