2022年8月9日(火)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2020年6月5日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

「アンティファ(antifa)」を持ち出した本当の理由

 トランプ大統領は全国規模の抗議デモの発端となった人種差別問題を「アンティファ」によるテロ問題にすり替えようとしています。米国民の目をアンティファにそらせ、自分は「法と秩序」を守る大統領であるという戦略に出ました。

 アンティファは「アンチ・ファシスト(anti-fascist: 反独裁国家主義者)」の略で、極左グループです。反人種差別や反排他主義及び無政府主義を主張しています。1930年代にナチズムに対抗するために、ドイツで台頭したといわれていますが、米国ではトランプ大統領当選後に活動が活発になりました。

 2017年8月に南部バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義者と抗議活動家が衝突し、女性の活動家が死亡する事件が発生しました。筆者は同年9月、今回の暴動のきっかけとなった事件が発生したミネアポリスで、トランプ支持者を対象にヒアリング調査を実施しました。このとき、白人女性がシャーロッツビルでの事件にアンティファが絡んでいると主張していました(「トランプが『白人至上主義者』に恩赦を出した理由」参照)。

 今回トランプ大統領はアンティファをテロ組織に指定すると発表し、極右の白人至上主義者を喜ばせました。白人至上主義者はトランプ大統領の重要な支持基盤だからです。トランプ氏は「アンティファ対白人至上主義者」という対立構図を演出し、それを先鋭化させています。

全ては選挙のために

 前述しましたが、ミネアポリスでフロイドさんが白人警察官に殺され、それが原因で同州で抗議デモが起こり、暴徒化しました。にもかかわらず、トランプ大統領は決してミネソタ州の州民を非難しません。それどころか、ミネソタ州の州民は偉大だと褒めたたえています。なぜでしょうか。

 16年米大統領選挙においてトランプ大統領はヒラリー・クリントン元国務長官に対し、僅か1.5ポイント差でミネソタ州を落としました。20年の選挙ではミネソタ州は激戦州になると予想されており、トランプ氏は同州の選挙人獲得を目指しているからです。

 トランプ大統領はバイデン前副大統領及び民主党を極左とレッテルを貼って非難してきました。もちろん、バイデン氏や民主党は暴力的ではないのですが、極左のアンティファとイメージを重ね合わせています。もうここまでくると、全てが選挙のためです。

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